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お菓子作りの型は、たいてい何かで代用が効きます。パウンド型は牛乳パックやアルミホイルで作れますし、マフィン型は紙カップで済むこともあります。ところが、シフォンケーキだけは事情が違います。「代用品でやってみたけれど、しぼんだ」「型から出したら潰れていた」という話が絶えないのは、作り方が下手だからではありません。
先に正直なところを書いてしまうと、シフォンケーキは、お菓子の中でも型の代用がいちばん難しい部類です。理由はふたつあって、どちらも生地の性質そのものに関わっています。裏返せば、その理由を知っていれば「これは使える」「これは無理がある」の判断が自分でできるようになります。
この記事では、まずなぜ型が必要なのかを整理してから、紙型・牛乳パック・ステンレスボウルといった代用案をひとつずつ、限界も含めて見ていきます。安請け合いはしませんが、着地点はちゃんと用意しています。
まず、なぜシフォンには専用の型が要るのか
シフォンケーキの生地は、他の焼き菓子と比べて小麦粉の割合がとても低いのが特徴です。あのふわふわは、卵白の泡が大量の空気を抱え込むことで作られています。そのぶん、生地には自分の形を支える骨組みがほとんどありません。
では何が支えているかというと、型の壁です。膨らむ生地が型の内側に張り付き、そこにつかまるようにして上へ登っていきます。壁に手をかけてよじ登っているようなイメージで、この張り付きがなければ、生地は登れずに横へ広がってしまいます。
中央に筒が立っているのも同じ理由です。円柱の真ん中に穴があることで、生地がつかまれる壁の面積が増えます。同時に、真ん中まで熱が届きやすくなり、中心部が生焼けのままになるのを防いでくれます。
そして、焼き上がったあとにやってくるのが逆さ冷ましです。熱いうちのシフォンは、まだ組織が固まりきっていません。そのまま置くと自分の重さで沈んでしまうので、逆さにして吊るし、重力を利用しながら形を保ったまま冷ますわけです。この工程が成立するのは、生地が型にしっかり張り付いていて、逆さにしても落ちてこないからです。
ここまでで、代用品に求められる条件がはっきりします。
- 生地が張り付く材質であること(つるつるしすぎていない)
- 中央に筒があること、または熱が中心まで届く形であること
- 逆さにして冷ませること、そのあいだ型が変形しないこと
- 焼成温度に耐えること
この4つを全部満たす身近な代用品が、そうそう無い——というのが、この記事のいちばんの中身です。
油を塗る・紙を敷くは、シフォンでは逆効果です
ここは他のお菓子と真逆になるので、先に書いておきます。型離れをよくするために型に油を塗る、クッキングシートを敷く——パウンドケーキやスポンジではおなじみの手順ですが、シフォンケーキではこれをやると生地が壁につかまれなくなります。膨らみが足りない、焼いている途中でしぼむ、といった結果につながります。
同じ理由から、フッ素樹脂加工(テフロン加工など)のシフォン型は扱いが難しいとされています。表面が滑らかで生地が張り付きにくいため、膨らみを支えにくく、逆さにした時にケーキが落ちてしまうことがあるからです。アルミ製の型がすすめられるのは、この張り付きやすさゆえです。
加工された型でうまく焼いている人もいて、その場合は焼き時間を長めに取ってしっかり火を通す、といった調整をしているようです。ただ、これは「型の性質を作り手の腕で埋めている」状態なので、初めの一台として選ぶには不利になります。
ゆきこ( ゚Д゚)『くっつかない型のほうが良いと思っていたのに、シフォンだけは逆だったなんて』
代用案①:紙のシフォンケーキ型
結論を先に置いてしまうと、代用として現実的なのは紙のシフォンケーキ型です。製菓材料店や100円ショップ、ネット通販で手に入る、使い捨ての紙製の型です。
これが強いのは、先ほどの4条件をきちんと満たしているからです。紙は表面がざらついているので生地が張り付きますし、中央に筒がある形状で作られています。オーブンでの使用を前提にした紙なので耐熱の心配もありません。
ただし、逆さ冷ましのやり方だけは金属型と違います。紙型は自立しないので、コップや瓶にかぶせるように逆さに立てるか、網の上に伏せて置く形になります。中央の筒に細い瓶の口を差し込んで支える方法が、いちばん安定します。
もうひとつの利点が、そのまま人に渡せることです。型から外す作業がいらないので、シフォンでいちばん緊張する「型出し」の工程をまるごと省略できます。差し入れや手土産にするなら、金属型より紙型のほうが向いている場面すらあります。
弱点は、使い捨てなので焼くたびにコストがかかることと、繰り返し焼く人には割高になることです。とはいえ「金属型を買うほどではないけれど今日は焼きたい」という状況の答えとしては、これがいちばんきれいに収まります。
在庫メモ
代用案②:牛乳パックで筒を作る——耐熱の扱いに注意が必要です
牛乳パックはお菓子作りの代用品としてよく登場しますし、パウンドケーキ型の代用としては定番の一つです。ただ、シフォンに使うとなると、ふたつの問題が重なります。
ひとつめは耐熱です。牛乳パックの内側はポリエチレンでコーティングされており、この膜は100℃前後から溶け始めるとされています。そのため、牛乳パックをオーブンや電子レンジで加熱することは避けるよう、製菓メーカーからも注意喚起が出ています。シフォンケーキの焼成温度は170〜180℃前後が一般的で、この温度帯はコーティングの耐熱を明らかに超えます。直火にかけることも同様に避けてください。
やむを得ず紙容器を使う場合には、アルミホイルや耐熱温度を超えないクッキングシートを内側に敷いて、生地がコーティング面に直接触れないようにする工夫が案内されています。ここで、ふたつめの問題が出てきます。内側にホイルやシートを敷いてしまうと、生地が壁につかまれなくなるのです。この記事の前半で確認したとおり、シフォンにとって張り付きは膨らみの生命線です。
つまり牛乳パックは、安全に使おうとすると膨らまなくなり、膨らませようとすると耐熱の問題が残るという板挟みになります。パウンドケーキのように「膨らみを壁に頼らない」焼き菓子であれば、内側を覆う工夫が成立しますが、シフォンでは事情が違うわけです。この一点をもって、牛乳パックのシフォン型代用はおすすめしにくい、というのが正直なところになります。
代用案③:ステンレスボウル・パウンド型・マフィン型
家にある器で焼く、という方向も見ておきます。
ステンレスボウル・耐熱ガラスボウル
耐熱の面ではクリアできます。ただし中央に筒がありません。生地の厚みが中心ほど厚くなるため、外側が焼けても中心が生焼けのまま残りやすくなります。焼き時間を延ばすと、今度は外側が乾いてしまいます。
ステンレスの内側はつるつるしているので、張り付きも弱くなりがちです。そして逆さ冷ましをしようにも、丸い形状は安定して伏せられません。ボウルで焼いたものは「ドーム型のふわふわ焼き菓子」としては成立しても、シフォンケーキそのものとは別のものになると考えたほうが納得がいきます。
パウンド型・スクエア型
こちらも筒がない点は同じですが、生地の厚みが薄くなるぶん、ボウルよりは火の通りが揃います。逆さにするのが難しいので、焼き上がったらできるだけ早く粗熱を取り、沈む前に固まるよう浅めに流すのが現実的な使い方です。ふんわり感は本来のシフォンより控えめになります。
マフィン型・紙カップ
小分けにすると、ひとつあたりの生地が薄くなるので中心まで火が通ります。逆さ冷ましも、網に伏せる形で何とかなります。シフォン生地を使った小さな焼き菓子としてはうまくいく道で、「あの背の高いリング型を再現したい」という目的でなければ、じゅうぶん満足できる着地点です。
代用品の向き不向き 早見表
4つの条件それぞれについて、代用品がどこまで満たせるかをまとめました。
| 代用品 | 張り付き | 中央の筒 | 逆さ冷まし | 耐熱 | 総合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 紙のシフォンケーキ型 | ○ | ○ | ○(瓶などで支える) | ○ | ◎ 現実的な最適解 |
| アルミのシフォン型(本来の型) | ◎ | ○ | ◎ | ○ | ◎ 繰り返し焼くならこれ |
| フッ素樹脂加工のシフォン型 | × | ○ | △(落ちることがある) | ○ | △ 焼き方の調整が要る |
| マフィン型・紙カップ | ○ | —(薄いので不要) | △ | ○ | ○ 別のお菓子として成立 |
| パウンド型・スクエア型 | ○ | × | × | ○ | △ ふんわり感は控えめに |
| ステンレス・ガラスのボウル | △ | × | × | ○ | △ 中心が生焼けになりやすい |
| 牛乳パック | ×(内側を覆う前提のため) | × | × | × | × すすめられない |
表にすると、紙のシフォン型だけが全項目を通過していることが見えてきます。「家にあるもので何とかする」という方向で探していた場合には少し肩透かしかもしれませんが、シフォンについては数百円の紙型を1枚買うのが、いちばん近道という結論になります。
型を替えても直らない失敗もあります
最後にひとつ。型を代用して膨らまなかった時、原因が本当に型だったのかは、切ってみると分かることがあります。底が持ち上がっている、真ん中に空洞がある、焼いたあとに縮んだ——といった失敗は、型ではなくメレンゲの状態や混ぜ方、焼成温度に理由があることも多いためです。
断面の見た目から原因をたどる方法はシフォンケーキの失敗例を断面から逆引きのほうにまとめてあります。紙型に替えても結果が変わらなかったなら、そちらを一度見てみてください。型の問題と生地の問題は、混ざったままだと切り分けられません。
まとめ:張り付いて登る、が全部の理由です
- シフォンの生地は小麦粉が少なく、型の壁に張り付いて登ることで形を保っています。だから型の代用が難しい
- 油を塗る・紙を敷くはシフォンでは逆効果。フッ素樹脂加工の型が扱いにくいのも同じ理由です
- 現実的な代用は紙のシフォンケーキ型。張り付き・筒・逆さ冷まし・耐熱の4条件をすべて満たします
- 牛乳パックはおすすめしにくい。内側のポリエチレンは100℃前後で溶け始めるとされ、オーブンでの使用は避けるよう案内されています
- ボウルやパウンド型は「シフォン生地の別の焼き菓子」として楽しむと、無理がありません
保存版:この記事の早見表
代用品の向き不向きを1枚の画像にまとめました。買い物の前や、台所で迷った時にすぐ見返せます。


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