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白いシャツにアイロンをかけていたら、うっすら茶色い線がついた。あわてて底を見たら、かけ面に飴色の焦げがべったり——あれは本当にがっかりします。しかも一度ついてしまうと、次にかけた服にまた移るので、放っておくわけにもいきません。
調べると「重曹で落ちます」「メラミンスポンジでこするだけ」といった方法がいくつも出てきます。ただ、この手の記事でいちばん抜けているのが、お使いのアイロンのかけ面が何でできているかという話です。ここを飛ばしてこすってしまうと、焦げは取れても表面の加工ごと削れて、前より滑らなくなることがあります。
そこでこの記事では、素材ごとに使える方法を分けるところから始めます。そのうえで、茶色い焦げ・ベタベタののり・白い粉の水あかは正体が違うので落とし方も違うこと、冷ましてやることと温めてやることの切り分け、服のほうについてしまったテカリまで、順番にまとめました。
まず、汚れているのは本体ですか、それとも服ですか
「アイロンの焦げ」と一口に言っても、じつは2つの困りごとが混ざっています。
ひとつはアイロン本体のかけ面についた汚れ。茶色い焦げ、飴色のベタつき、白い粉のようなもの。これから落とすのはこちらです。
もうひとつは服のほうについてしまったテカリや焦げ跡。かけたところが不自然に光っている、色が変わっている、というものです。こちらは布の側の問題なので、道具も手当ても別になります。後ろのほうに章を用意したので、そちらを見てもらえたらと思います。
どちらにしても、まず守っていただきたいことがあります。
安全のための確認:作業の前に、必ず電源プラグをコンセントから抜き、かけ面が完全に冷めるまで待ってください。アイロンのかけ面は設定によって100度から200度前後になり、電源を切った直後もしばらく高温のままです。やけどのおそれがあります。また、通電したまま濡れた布で拭く行為は感電につながります。「少し温かいくらいなら」と始めてしまいがちなところですが、ここは待ってください。
安全のための確認:アイロンに水をかけたり、水につけたりしないでください。本体内部に水が入ると故障の原因になり、乾いていない状態で通電すれば感電のおそれがあります。掃除に使うのは、あくまで固くしぼった布です。
焦げの正体は、溶けた化繊とのりと洗剤カス
そもそもあの茶色いものは何なのか。ここが分かると、道具の選び方が変わってきます。
いちばん多いのが溶けた化学繊維です。ポリエステル、ナイロン、アクリルといった合成繊維は、熱で溶ける温度が意外と低く、アイロンの設定を上げすぎると繊維そのものが溶けてかけ面に貼りつきます。ワッペンの接着剤やプリント、ボタンのまわりの飾りなども同じです。冷えると固まり、そこに次の熱が加わって茶色く焼けていきます。
次に多いのが洗濯のりやスプレーのりの残り。のりは糖類や樹脂でできているので、熱でカラメルのように色づき、ベタつきます。かけ面がなんとなく引っかかる、滑りが悪いという場合はこれが原因のことが多いです。
そして洗剤・柔軟剤のすすぎ残し。布に残った成分が熱で焼き付いて、うっすら茶色い膜になります。
共通しているのは、これらが「有機物が焼けたもの」=酸性寄りの汚れだという点です。だから、アルカリ性のものが効きます。ここで重曹の出番になります。
覚えておくと迷わないのは、次の一文です。焦げ・皮脂・のりは酸性の汚れなので重曹(アルカリ性)。水あか・カルキはアルカリ性の汚れなのでクエン酸(酸性)。原則は「汚れの液性と逆のものを使う」。アイロンには両方の汚れがつくので、この使い分けを取り違えると、いくらこすっても落ちないという事態になります。
ゆきこ( ゚Д゚)『茶色いのは、服が溶けたやつだったんだ…』
かけ面の素材で、使える方法が変わります
ここが、この記事でいちばん大事なところです。アイロンのかけ面には、おもに3つの種類があります。取扱説明書か、本体の底面・箱の表示で確認できます。
フッ素樹脂加工
滑りをよくするために、金属の上に樹脂の膜をかけたものです。安価なモデルに多く、黒っぽい色をしていることが多いです。この膜は非常に薄いので、削るとすぐに下地が出ます。
安全のための確認:フッ素樹脂加工のかけ面に、金属たわし・メラミンスポンジ・クレンザーなどの研磨剤を使わないでください。コーティングが削れると滑りが悪くなるだけでなく、削れた段差に汚れがたまりやすくなり、以前より焦げつきやすい状態になります。使えるのは、中性洗剤を含ませて固くしぼった布と、やわらかい布だけと考えてください。
セラミック
陶器のような層を焼き付けたもので、フッ素より硬く、熱の伝わり方が均一なのが特徴です。ただしこれも表面加工であることに変わりはないので、研磨する道具は避けます。重曹を使う場合も、粉のまま振りかけるのではなく、水で溶いてゆるいペーストにして布につけ、押し当てるようにして落とします。
ステンレス・チタン
金属そのものがかけ面になっているタイプです。加工の膜がないぶん傷に強く、重曹ペーストや専用クリーナーが使えます。ただし金属たわしのような硬いものでこすれば、金属にも傷は入ります。傷はそのまま引っかかりになるので、やはり弱い道具から順に試すのが確実です。
この「弱い道具から順に」という考え方は、金属を相手にする手入れではだいたい共通しています。錆びた包丁を扱う時も同じ順番になるので、よければ包丁の錆の取り方もどうぞ。削る前に、削らずに済む方法があります。
茶色い焦げの落とし方——冷ましてから、弱い順に
ここからが実際の手順です。この章の作業はすべて、電源を抜いて完全に冷ました状態で行います。
1. 中性洗剤を含ませた布で拭く
まずはここからです。台所用の中性洗剤を薄めた水に布をひたし、固くしぼって、焦げの上に置くように当てます。数分そのままにして汚れをふやかしてから、同じ方向に拭き取ります。ついたばかりの汚れや、うっすらした変色なら、これだけで落ちることがよくあります。
拭き終わったら、洗剤が残らないように水拭きし、乾いた布で仕上げます。
2. 重曹を水で溶いて使う
落ちなければ、次は重曹です。重曹は弱いアルカリ性なので、酸性寄りの焦げに反応してくれます。
重曹小さじ1に水を数滴ずつ加えて、練り歯みがきくらいのゆるいペーストにします。これを布か綿棒につけて、焦げの上にのせ、5分ほど置いてから、力を入れずに拭き取ります。粉のまま振りかけて指でこするのは避けてください。重曹の粒がそのまま研磨剤として働いてしまい、加工面を傷める原因になります。
重曹を使った後は、成分が残らないように水拭きを2回ほど。残るとそこがまた焼き付きます。
3. 専用のアイロンクリーナー
それでも取れない、層になって固まっている、という状態なら専用品です。アイロンクリーナーは、かけ面を温めた状態で使うタイプが多く、スティック状のものを軽く塗って、当て布や古いタオルの上で滑らせて汚れを移し取ります。温度設定と使い方は商品ごとに違うので、必ずその商品の説明どおりに使ってください。
- アイロンのかけ面用クリーナー(スティック状のもの。かけ面の素材によって使える商品が違うので、表示の確認を):楽天市場で見る
4. 当て布に押し当てる方法
古くからある方法として、いらない綿の布や新聞紙を広げ、低めの温度に温めたアイロンをその上で滑らせて汚れを移す、というやり方があります。溶けた化繊が主体の焦げには、これが効くことがあります。この方法は熱いアイロンを扱うので、片手で本体を持ち、布は動かさず、手を近づけないでください。綿の当て布を使い、化繊の布は使わないでください。溶けてかえって貼りつきます。
使ってはいけないもの
安全のための確認:塩素系漂白剤をアイロンのかけ面に使わないでください。金属を腐食させ、変色や点状のくぼみの原因になります。また、塩素系のものと酸性のもの(クエン酸・酢・酸性タイプの洗剤)を同時に使ったり混ぜたりしないでください。有毒なガスが発生します。
メラミンスポンジは、水だけで汚れを削り落とす道具です。ステンレス面であれば選択肢に入りますが、フッ素樹脂加工とセラミックのかけ面には使わないでください。目に見えないほど細かい研磨材の集まりなので、加工の膜を確実に削ります。
- メラミンスポンジ(削る道具です。ステンレス面向け。フッ素樹脂加工・セラミックのかけ面には使わないでください):Amazonで見る
ベタベタののりは、温めてから
焦げは冷ましてから落としますが、のりのベタつきだけは、少し温めたほうがよく取れます。のりは熱でやわらかくなる性質があるので、冷えた状態でこすっても伸びるばかりで、なかなか離れてくれません。
やり方としては、いらない綿の布か新聞紙を台の上に広げ、アイロンを低温に設定して、その上をゆっくり滑らせます。やわらかくなったのりが布のほうへ移っていきます。数回くり返すと、引っかかりがだいぶ減ります。
そのあと電源を抜いて完全に冷ましてから、中性洗剤を含ませた布で仕上げ拭きをします。温めた状態のまま濡れた布で拭くことはしないでください。やけどと、急冷による本体への負担があります。
のりが原因のベタつきをそもそも減らしたいなら、スプレーのりを布から20センチ以上離してかける、かけ面に直接かからないようにする、といったところで変わってきます。
白い粉のようなものは水あか——ここだけ酸の出番
スチーム穴のまわりに白い粉がふいている、スチームと一緒に白いものが出て服につく。これは焦げとはまったく別のもので、水道水に含まれるミネラル分が固まった水あか(カルキ)です。
水あかはアルカリ性寄りの汚れなので、ここでは重曹は効きません。使うのはクエン酸か酢、つまり酸性のものです。冒頭の原則どおり、汚れの液性と逆のものを使う、という話がそのまま当てはまります。
手当てとしては、機種にセルフクリーニング機能があればそれを使うのが第一です。ない場合は、水タンクに使える薬剤が指定されていることもあるので、取扱説明書を先に見てもらえたらと思います。かけ面の外側についた白い粉は、クエン酸を溶かした水に布をひたして固くしぼり、当てて拭き取ります。
安全のための確認:スチーム穴に、つまようじ・針金・綿棒の芯などの固形物を差し込まないでください。内部の部品を傷めたり、折れた先が中に残ったりするおそれがあります。詰まりが取れない場合は、メーカーの相談窓口へ。
水あかを増やさないためには、給水に何を使うかが効きます。機種によって指定が分かれるところなので、これも取扱説明書が正解です。
服にできてしまったテカリの直し方
ここからは服の側の話です。かけたところが不自然に光ってしまった、というやつです。
テカリは、繊維が熱と圧力でつぶれて平らになり、光を一様に反射している状態です。毛羽が寝てしまっているので、起こしてやれば戻るというのが基本の考え方になります。
- 当て布をして、蒸気を当てる——テカった部分に霧吹きで軽く水を含ませ、当て布をのせて、アイロンを浮かせぎみに当てます。押しつけずに、蒸気で繊維をふくらませるつもりで
- 酢水を使う——水100ミリリットルに酢を小さじ1ほど混ぜたものを霧吹きで軽く吹き、当て布をして蒸気を当てます。においは乾けば飛びます。色柄物は目立たないところで試してから
- ブラシで毛羽を起こす——ウールなど毛足のある生地は、蒸気を当てたあとに洋服ブラシで一方向にとかすと戻りやすくなります
ただ、正直に書いておきたいことがあります。ポリエステルなどの化学繊維にできたテカリは、繊維そのものが溶けて変形しているため、元に戻らないことがあります。綿や麻、ウールは比較的戻りやすく、化繊は難しい。ここは生地の性質によるところで、無理にこすると毛羽立ちや穴になってしまいます。大切な服なら、そこで手を止めてクリーニング店に相談するほうが安全です。
そもそもテカらせないためには、当て布を1枚はさむのがいちばん確実です。アイロン台がない時の代用も含めて、かける場所の作り方はアイロン台の代用は100均でできる?にまとめました。台がぐらつくと押しつける力が偏るので、テカリの原因にもなります。
アイロン自体の買い替えを考えている場合はスチームアイロンで後悔しない選び方を、名前つけなど布に何かを写す作業で困っている場合は名前つけで布ににじまない方法もあわせてどうぞ。
汚れと素材から引く早見表
いま見えているものから逆に引けるように、まとめておきます。
| 見えているもの | 正体 | 使うもの | 温度 |
|---|---|---|---|
| 茶色い焦げ・飴色の膜 | 溶けた化繊・のり・洗剤カス(酸性の汚れ) | 中性洗剤 → 重曹を水で溶く → 専用クリーナー | 冷ましてから |
| ベタベタ・引っかかり | 洗濯のり・スプレーのり | 当て布や新聞紙に押し当てて移す | 低温に温めて |
| 白い粉・スチームに白いもの | 水あか・カルキ(アルカリ性の汚れ) | クエン酸または酢。セルフクリーニング機能 | 説明書に従う |
| 黒い点・すすのようなもの | 焼き付いた繊維の炭 | 中性洗剤 → 重曹ペーストで押し当てる | 冷ましてから |
| 服が光っている | 繊維がつぶれたテカリ | 当て布と蒸気。酢水。ブラシ | 浮かせて当てる |
| かけ面の素材 | 中性洗剤 | 重曹(水で溶く) | メラミンスポンジ | 金属たわし |
|---|---|---|---|---|
| フッ素樹脂加工 | 使えます | 避けてください | 使わないでください | 使わないでください |
| セラミック | 使えます | ペーストで押し当てるまで | 使わないでください | 使わないでください |
| ステンレス・チタン | 使えます | 使えます | 使えます(傷に注意) | 避けてください |
まとめ:削るのは最後の手段です
- 必ず電源プラグを抜き、完全に冷ましてから作業してください。やけどと感電を避けるためです
- アイロンに水をかけたり、水につけたりしないでください。使うのは固くしぼった布だけです
- まず、かけ面の素材を確認してください。フッ素樹脂加工とセラミックは、研磨する道具を使えません
- 焦げ・皮脂・のりは酸性の汚れなので重曹(アルカリ性)。水あか・カルキはアルカリ性の汚れなのでクエン酸(酸性)。汚れの液性と逆のものを使うのが原則です
- 重曹は粉のままではなく、水で溶いてペーストにして使ってください。粉のままだと研磨剤として働きます
- 焦げは冷ましてから、のりは温めてから。正体が違うので、手順も逆になります
- 塩素系漂白剤は使わないでください。金属が腐食します。塩素系と酸性のものを混ぜないでください
- スチーム穴に固形物を差し込まないでください。詰まりが取れない時はメーカーの相談窓口へ
- 服のテカリは当て布と蒸気で繊維を起こす。ただし化学繊維は戻らないことがあります
保存版:この記事の早見表
かけ面の素材別に使える道具と、汚れの種類ごとの落とし方を1枚にまとめました。アイロンを出すたびに確認できるよう、スマホに保存しておくと便利です。



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