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障子紙を買ってきて、いざ貼ろうという段になって、のりだけが見つからない。あるいは、封を開けてみたら中でカチカチに固まっていた。障子の貼り替えは年に一度あるかないかの作業なので、ちょうどこういうことが起きます。
そこで「家にあるもので代用できないかな」と探すことになるのですが、ここでひとつだけ、先に知っておいてほしいことがあります。障子のりに求められているのは、強く貼りつく力ではありません。むしろ逆で、次に貼り替える時に水でふやかせば、きれいにはがれてくれることです。
この基準を知らずに、手元にあるいちばん強い接着剤を使ってしまうと、その日はうまくいっても、次の貼り替えで泣くことになります。この記事では、代わりに使えるもの、台所にあるもので作る方法、絶対に使ってはいけないもの、そして貼り方と失敗した時の直し方まで、順番に整理しました。
障子のりの仕事は「くっつくこと」より「はがせること」
障子は、消耗品として作られている建具です。紙は日に焼けて黄ばみますし、小さいお子さんのいるおうちなら指が当たって破れます。だから何年かに一度、紙だけを取り替える前提で成り立っています。
そのために、木の桟と紙をつないでいるのりには、変わった条件が課されています。
- 貼っているあいだは、紙の重みと張力にじゅうぶん耐えること
- それでいて、水を含ませればゆるんで、紙がはがれること
- はがれた後、桟に残ったのりも水でふやけて拭き取れること
- 木を傷めず、変色させないこと
この4つを満たすのが、でんぷんを原料にしたのりです。でんぷんは水を吸うと粒がふくらんで粘りを出し、乾くと水分が抜けて固まります。ところが、この固まり方はあくまで「水が抜けただけ」の状態なので、もう一度たっぷり水を含ませると、また粘りに戻ってゆるみます。この可逆性が、障子という建具にぴったり合っています。
逆に言えば、「乾くと水に強くなる」タイプの接着剤は、条件を根本から外していることになります。ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
台所にあるもので作れます(小麦粉・片栗粉ののり)
のりが手に入らない時、いちばん確実な代わりは、自分で作ってしまうことです。材料は粉と水だけです。
小麦粉で作る場合
- 小麦粉 大さじ1 に対して、水 約200ミリリットルを用意します
- 鍋やボウルに小麦粉を入れ、水を少しずつ加えながら、ダマが残らないようによく溶きます。ここで一気に水を入れるとダマになるので、最初は少量でペースト状にしてからのばしてください
- 弱火にかけ、木べらで底から絶えず混ぜながら加熱します
- 白く濁っていた液が、だんだんとろみを帯びて半透明になったら火を止めます。目安は、木べらですくった時に、糸を引かずにゆっくり落ちるくらいのゆるさです
- 完全に冷ましてから使います
片栗粉で作る場合
片栗粉のほうがとろみが出やすいので、粉は控えめにします。片栗粉 小さじ1に対して、水 約100ミリリットルから始めて、同じように弱火で加熱してください。片栗粉は温度が上がった瞬間に一気にとろむので、混ぜる手を止めないのがコツです。固すぎたら、冷める前に水を少しずつ足してのばせます。
安全のための確認:加熱中の鍋とのりは高温です。やけどに注意してください。また、作ったでんぷん糊は防腐剤が入っていないため、数日でカビや腐敗が起こります。作り置きはせず、使い切れなかったぶんは処分してください。冷蔵しても長くはもちません。
ゆきこ( ゚Д゚)『障子ののりって、おかゆみたいな作り方なんだ…』
のりの濃さの目安と、塗り方のコツ
手作りののりでも市販ののりでも、失敗のほとんどは濃さと量で決まります。ここを外すと、乾いた後に見た目でばれてしまいます。
| のりの状態 | 貼った時 | 乾いた後 | 直し方 |
|---|---|---|---|
| 濃すぎる(もったり) | 桟に均一に伸びない | 塗りムラが影になって透ける | 水を足してのばす |
| ちょうどよい | 薄くすっと引ける | 桟の線がすっきり出る | —— |
| 薄すぎる(さらさら) | 紙にしみて広がる | 乾いてから端が浮く・はがれる | もう一度作り直す |
市販の障子のりも、そのままでは濃いことがあります。水で少しのばして使うと、塗りやすくなり、はみ出しも減ります。製品によっては「原液のまま」「水で薄めて」と指定があるので、そこは容器の表示を見てください。
塗り方は、次の順番でうまくいきます。
- 桟のほこりと古いのりを、乾いた布と固くしぼった布で落としておきます——ここをさぼると、乾いた後に浮きます
- のりは桟の上に、薄く均一に。盛り上げても強くはなりません。むしろ乾きが遅くなり、はみ出す原因になります
- 外周の枠から先に塗り、次に中の桟へ——紙を置いた時に位置が決まりやすくなります
- 紙は、片側を軽く合わせてから、たるませ気味に置いていきます——最初からぴんと張ると、乾いた時に紙が縮んで桟が引っぱられます
- はみ出したのりは、乾く前にすぐ拭き取ります——固くしぼった布で。乾いてからだと、桟にてかりが残ります
作業中は窓を閉めておくのがおすすめです。風が入ると紙があおられて、位置が決まる前に貼りつきます。
市販品で代わりになるもの
作らずに済ませたい時、店で手に入るもので代わりになるのは次の系統です。
- でんぷん系の文具のり(いわゆるヤマト糊のような、チューブや容器入りのでんぷんのり)——障子用として売られていなくても、原料がでんぷんであれば同じ性質です。水で少しのばして使うと塗りやすくなります
- 障子用として売られているのり——最初から障子紙の重さと桟の幅に合わせて作られています。容器の先が細くなっていて、桟の上に直接引けるタイプが扱いやすいです
- のり付きの障子紙——紙側にのりが仕込まれていて、水で湿らせると接着するタイプです。のりを別に買う必要がありません
逆に、スティックのりは障子には力不足です。塗った端から乾いてしまい、長い桟を一気に貼るには向いていません。小さな破れを応急でふさぐくらいなら使えます。
- 障子のり(でんぷん系。桟の上に直接引けるノズル付きが扱いやすいです。水で薄めるかどうかは容器の表示を確認してください):Amazonで見る
使ってはいけない接着剤
ここは、はっきり書きます。次のものは障子には使わないでください。
安全のための確認:木工用ボンドを障子紙の接着に使わないでください。木工用ボンドは乾くと耐水性が上がるため、水を含ませてもゆるみません。はがそうとすると紙が桟に残って引きちぎれ、こそげ落とす作業で桟の木そのものを削ってしまいます。障子の桟は数ミリの細さで作られているので、一度削れば元に戻りません。次の貼り替えの手間と仕上がりが、まるごと変わってしまいます。
同じ理由で、次のものも向いていません。
| 使いたくなるもの | その場の貼り心地 | 次の貼り替えで起きること | 判定 |
|---|---|---|---|
| 木工用ボンド | よくつく | 水でゆるまず、桟を削ることになる | 使わない |
| 瞬間接着剤 | 点でしかつかない | 白く固まって残る。紙が硬化して破れる | 使わない |
| 両面テープ | 手早い | 粘着剤が桟に残り、はがす時に木の表面が持っていかれる | 応急のみ |
| のりスプレー | 広い面が一度に塗れる | 桟以外にも飛んで、枠にべたつきが残る | 応急のみ |
| ガムテープ・布テープ | とりあえずつく | 時間が経つと粘着剤が変質して茶色く残る | 使わない |
| スティックのり | 塗りやすい | 接着力が足りず、乾く前に先が固まる | 小さな破れの応急のみ |
両面テープとのりスプレーを「応急のみ」としているのは、賃貸で退去まで持たせたい、来客の直前に一枚だけ直したい、といった場面が現実にあるからです。使うなら、次に貼り替える人が困ることを承知のうえでという前提になります。とくに賃貸のおうちでは、桟に粘着剤が残ると原状回復の話につながることもあるので、慎重にしてもらえたらと思います。
のりを使わない別解もあります
そもそも、のりを使わない障子紙も売られています。困っているのが「のりがない」ことだけなら、こちらに切り替えてしまうのも手です。
- アイロンで貼るタイプ——紙の裏に熱で溶ける接着剤が付いていて、アイロンの熱で貼りつけます。のりを塗る工程がまるごと消えるので、いちばん手が汚れません。はがす時も、もう一度アイロンを当てて温めながらはがします
- 両面テープ専用タイプ——専用のテープとセットで使うもので、はがす時のことまで設計されています
- アイロン不要のシールタイプ——貼り直しがしやすい反面、面積が大きいとしわが出やすいです
アイロンタイプは、和紙よりも樹脂を織り込んだ丈夫な紙が多く、破れにくいのも利点です。小さいお子さんやペットがいるおうちでは、そこが効いてくると思います。ただし、アイロンの温度は必ず紙の説明書きに合わせてください。高すぎると紙が縮んだり変色したりします。
- アイロンで貼る障子紙(のりが要らないタイプ。設定温度と当て方は製品の説明書きに従ってください):楽天市場で見る
アイロンを使う作業なので、平らで熱に耐える下地が要ります。アイロン台がない時にどうしのぐかはアイロン台の代用は100均でできるかにまとめてあるので、あわせて見てもらえたらと思います。
貼った直後のたるみは、放っておいていいです
貼り終わった直後に見ると、紙がふにゃりとたるんでいて「失敗した」と思うことがあります。ここは、ほとんどの場合そのままで大丈夫です。
のりに含まれた水分を紙が吸うと、繊維がふくらんで、紙はいったん伸びます。それが乾いていく過程で水分が抜け、繊維が縮んで紙が張っていきます。障子紙がぴんと張るのは、この縮む力によるものです。だから、貼る時に力いっぱい引っぱってしまうと、乾いた後にさらに縮んで、桟をゆがめたり紙が裂けたりすることがあります。
乾く時間の目安は、季節と湿度によりますが、おおむね数時間から半日ほどです。冬の乾いた日は早く、梅雨どきは長くかかります。乾ききるまでは、桟を動かしたり、障子を立てかけ直したりしないほうがきれいに仕上がります。
安全のための確認:障子紙は薄く乾いた紙で、非常に燃えやすい素材です。乾きを早めようとして、ストーブやヒーターのそばに立てかけないでください。暖房器具の前で作業もしないでください。とくに電気ストーブのように熱源がむき出しの器具は、紙が触れた瞬間に着火します。乾かすなら、風通しのよい室内で自然に乾かしてください。扇風機の風を弱く当てるくらいまでにとどめてもらえたらと思います。
それでもたるみが残った時は、霧吹きで紙全体に軽く水を吹いて、もう一度乾かすと張ってくることがあります。びしょ濡れにするとはがれてしまうので、霧が薄くのる程度にしてください。
古い紙をはがす時は、霧吹きで湿らせてから
貼り替えでいちばん時間がかかるのは、じつは新しい紙を貼る作業ではなく、古い紙をはがす作業です。ここも、でんぷんのりの性質を使えば楽になります。
- 障子を外して、平らなところに寝かせます——立てたままだと水が垂れて、下の枠に集まります
- 桟の上に沿って、霧吹きで水を含ませます。のりが付いているのは桟の線の上だけなので、紙全体を濡らす必要はありません
- 2分から5分ほど置きます。のりが水を吸ってゆるむのを待つ時間です。ここを待たずに引っぱると、紙がちぎれて残ります
- 端からゆっくりはがします。抵抗を感じたら、そこにもう一度水を足して待ちます
- 桟に残ったのりを、固くしぼった布で拭き取ります。落ちにくい時は、ぬるま湯を含ませた布を数分のせておくとゆるみます
- 桟をしっかり乾かしてから、新しい紙を貼ります——濡れたまま貼ると、のりが薄まって接着が甘くなります
桟を削るような道具を使う必要は、本来ありません。削らないと取れないのりが付いているとしたら、それは前回にでんぷん以外のものが使われたということで、そこがまさに、この記事の冒頭に書いた「次の貼り替えで困る」の正体です。
症状から引く早見表
困っている場面から逆に引けるように、まとめておきます。
| 今の状況 | 使えるもの | ひとこと |
|---|---|---|
| のりが見つからない・固まっていた | 小麦粉または片栗粉で手作り | 粉と水だけ。冷ましてから使う |
| 火を使わずに済ませたい | でんぷん系の文具のり | 水で少しのばすと塗りやすい |
| のりを塗る作業自体が面倒 | アイロンで貼るタイプの障子紙 | 温度は製品の指定に従う |
| 破れを一か所だけ直したい | 補修シール・スティックのり | 広い面には向かない |
| 今日じゅうに終わらせたい | 両面テープ(応急) | 次の貼り替えで桟に粘着剤が残る |
| 強く貼りたい | 木工用ボンドは使わない | 水でゆるまず、桟を削ることになる |
| 塗りムラが透けて見える | のりが濃すぎた | 水を足してのばす |
| 乾いたら端が浮いた | のりが薄すぎた・桟が汚れていた | 桟を拭いてから貼り直す |
| 貼った直後にたるんでいる | そのまま乾かす | 乾くと紙が縮んで張ります |
| 古い紙がちぎれてはがれない | 霧吹きで湿らせて数分待つ | 待たずに引くとちぎれます |
障子の紙が破れやすい、猫が引っかく、というお悩みなら、同じ建具まわりの話として網戸の猫対策も参考になると思います。障子をやめてカーテンで仕切ってしまう方法を考えているなら、カーテンの代わりになるもののほうに近い話が入っています。
まとめ:選ぶ基準は「次にはがせるか」です
- 障子のりに求められるのは、強い接着力ではなく、水でゆるんではがれることです。ここを外すと次の貼り替えで困ります
- 台所の小麦粉や片栗粉で作れます。小麦粉なら大さじ1に水200ミリリットル、片栗粉なら小さじ1に水100ミリリットルから。弱火で混ぜ、半透明になったら火を止めて冷まします
- 作ったでんぷん糊は数日で傷みます。作り置きはせず、使い切ってください
- 木工用ボンドは使わないでください。乾くと水に強くなり、はがす時に桟の木を削ることになります
- 両面テープとのりスプレーは応急まで。桟に粘着剤が残ります
- のりは薄く均一に。はみ出しは乾く前に拭き取ります。盛っても強くはなりません
- 貼った直後のたるみは、乾けば紙が縮んで張ります。引っぱりすぎないでください
- 障子紙は燃えやすい紙です。暖房器具のそばで作業したり、乾かしたりしないでください
- 古い紙は、桟の線に霧吹きをして数分待ってからはがします。削る必要は本来ありません
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使えるものと使ってはいけないもの、そして手作りののりの分量を1枚にまとめました。スマホに保存しておくと、売り場でも作業中でも見返せます。


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