手作り味噌の黒いものはカビ?——酸化・チロシン・産膜酵母との見分けと、続けられる線引き

家事

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冬に仕込んだ味噌の重しをどけて、ラップをめくった瞬間。表面が黒ずんでいたり、白いつぶつぶが浮いていたり、ふわっとしたものが乗っていたり。半年かけて育ててきただけに、心臓が一瞬止まるような気持ちになりますよね。

ただ、味噌の表面に出るものは大きく4種類あって、そのうち3つはカビではありません。黒い変色は酸化、白い粒はチロシンというアミノ酸の結晶、薄い白い膜は産膜酵母。この3つは仕込みが順調に進んでいる証拠でもあります。

とはいえ、本当にカビが出ることもあります。味噌は塩分が高いぶんカビに強い食品ですが、それでも空気に触れる表面は例外です。この記事では正体の見分けを先に片づけて、そのうえでどこまでなら取り除いて続けられるのか、どこからが処分なのかという線引きを、はっきりさせていきます。

てづくり味噌 表面に出るもの◎ 黒っぽい変色=さんか(無害)空気にふれた表面だけ。においは味噌のまま◎ 白いつぶつぶ=チロシンアミノ酸の結晶。じゃりっとするが害はない○ 白いうすい膜=産膜酵母取りのぞけばよい。無害とされるが風味おちる▲ 青・みどり・黒のふわふわ=カビ点なら周囲ごと除く。広ければ処分してください※異臭・広範囲・迷ったら 処分してください

味噌の表面に出るものは4種類——まず正体を分けます

ふたを開けたら、次の4つのどれなのかを決めるところから始めます。判断の材料は、色・形・匂い・触った感じの4点です。

見えるもの 正体 匂い 扱い
表面が黒〜こげ茶に沈んだ色 酸化・メイラード反応 味噌の香りのまま そのままでよい。気になれば薄く取る
白い粒がじゃりっと点在 チロシン(アミノ酸の結晶) 味噌の香りのまま そのままでよい。無害
白い薄い膜が面で広がる 産膜酵母 ツンとした発酵臭 取り除く。無害とされる
白・青緑・黒がふわふわ盛り上がる カビ かび臭い 範囲で判断。下の項目へ

ここでいちばん効く手がかりは、「面か、点か」と「平らか、盛り上がっているか」です。表面全体が均一に色を変えているなら化学変化、点で散らばって立体的に育っているならカビ。この2つの軸で、たいていは仕分けられます。

黒っぽい変色の正体は酸化——カビではありません

仕込んだ味噌のいちばん上、空気に触れている面だけが黒っぽく、こげ茶に沈んだ色になっている。これは酸化と、メイラード反応による色の変化です。

味噌は熟成が進むほど色が濃くなります。大豆のたんぱく質が分解されてできたアミノ酸と、麹が作った糖が反応して、褐色の色素になっていく——赤味噌が赤いのも、八丁味噌が黒っぽいのも、この反応が長く進んだ結果です。表面は空気に触れているぶん反応が早く進むので、そこだけ濃く見えるというだけの話になります。

だから、黒い変色そのものは無害です。判断の決め手は匂いで、味噌のいい香りしかしないなら酸化と考えて構いません。かび臭さや、鼻をつくアンモニア臭が混じっているなら別の話になります。

風味の面では、酸化した表面は少し香りが飛んでいます。気になるようなら、薄く1〜2ミリすくって取り除けば十分です。取らずに混ぜ込んでも問題はありませんが、混ぜると全体の色が濃くなるので、見た目を重視するなら取るほうがきれいに仕上がります。

ゆきこ( ゚Д゚)『黒いのを見て半年ぶん諦めかけました…酸化だったんですね』

白いものは2つ——チロシンと産膜酵母

白いものが出ていた場合、これも2つに分かれます。どちらもカビではありません。

じゃりっとする白い粒=チロシン

味噌の中や表面に、細かい白い粒が点々と見えることがあります。指でつまむとやや硬く、噛むとじゃりっとした感触がある。これはチロシンというアミノ酸が結晶化したものです。

大豆のたんぱく質が麹の酵素で分解されてアミノ酸になり、その中のチロシンが溶けきれずに結晶として出てきた——つまり、熟成がしっかり進んでいる証拠でもあります。無害ですし、取り除く必要もありません。長期熟成のチーズに白い粒が出るのと似た現象です。

カビとの違いははっきりしています。チロシンは硬い粒で盛り上がらず、味噌の中にも埋まっている。カビは表面にだけ、ふわっと立体的に生える。ここを見れば取り違えません。

薄い白い膜が面で広がる=産膜酵母

表面に、うっすらとした白い膜が張ったように広がっているタイプ。これは産膜酵母です。塩分と酸のある環境でも生きられる酵母で、味噌のほかにぬか床や梅干し、漬物の表面にも同じように出ます。

産膜酵母そのものは一般に無害とされています。ただ、増えるとシンナーのような独特のにおいが出て、味噌の香りを損ないます。見つけたら薄くすくって取り除いて、その下の味噌はそのまま使えます。

同じものはぬか床の表面にも出ますし、そちらでも白カビと取り違えられがちです。判断の感覚をつかむにはぬか床の白カビと産膜酵母の見分け方が参考になります。梅干しの液面に浮く白い膜も、正体は同じ仲間です。

カビが出た時の取り除き方——「表面のポツポツ」に限った手当て

白や青緑のふわふわが、表面に点々と出ている。これは産膜酵母でもチロシンでもなく、カビです。ここからは範囲によって対応が変わります。

味噌の仕込みでは、表面に出た点状のカビを周囲ごと取り除いて仕込みを続けるという手当てが、伝統的な方法として広く行われてきました。味噌は塩分が高く、内部は酸素の少ない環境なので、カビが表面より奥へ広がりにくいという性質があるためです。

手順としては、次のようになります。

  1. 清潔なスプーンで、カビの見えている部分を周囲ごとすくい取る。目安として周囲1センチ、深さも1センチほど、余裕を持って大きめに取り除きます
  2. すくったスプーンは、その都度きれいにする。同じスプーンで健全な部分を触ると、カビを植え付けることになります
  3. 取り除いたあとの表面を平らにならして、ホワイトリカーなど35度以上のアルコールを含ませたペーパーで、容器のふちと味噌の表面を拭く
  4. 表面に薄く塩をふる(塩蓋)か、ラップを空気が入らないよう密着させる。ここで空気を遮断できるかどうかが、その後を決めます
  5. 重しを戻し、涼しく直射日光の当たらない場所に置く

ただし、この手当てには前提があります。あくまで「表面に点状に出ているだけ」の段階に限った対応です。取り除けば絶対に安全になる、という保証をするものではありません。カビの菌糸は目に見える範囲より広く伸びていることがあり、カビが作るカビ毒(マイコトキシン)は加熱しても分解されません。味噌汁にして煮立てても、毒性は残ります。

だからこそ、次の項目の線引きが重要になります。

こうなっていたら、処分してください

ここは、やわらかい言い方をしません。次のどれかに当てはまる場合、その味噌は使わずに処分してください。

  • カビが表面の広い範囲に広がっている。点ではなく面で覆われている状態です
  • 黒や濃い青緑のカビが、盛り上がってふわふわと育っている。色付きのカビは、表面だけの問題として扱わないでください
  • 味噌の内部(表面から数センチ掘った先)にまでカビの色が入っている
  • ふたを開けた瞬間に、味噌の香りとは違う異臭がする。腐敗臭、鼻をつくアンモニア臭、酸っぱすぎる刺激臭など
  • 味噌が水っぽくゆるみ、糸を引く、ぬめりがある
  • 容器の内側やふたの裏にまでカビが広がっている

そして、次のことははっきり言っておきます。カビが生えた部分を削っただけの味噌を「もったいないから」と食べる判断は、推奨できません。とくに広範囲に出ている場合、目に見えている部分は氷山の一角です。小さなお子さん、妊娠中の方、高齢の方、体調をくずしている方が口にする可能性があるなら、迷う余地はありません。処分してください。

食べたあとに腹痛・嘔吐・下痢などの症状が出た場合は、様子を見ずに医療機関を受診してください。

同じ「取り除いて続けられるのか」という判断は、梅干しの仕込みでも出てきます。塩分と酸の条件が違うので線引きも変わりますが、考え方の型は共通です。あわせて読むなら梅干しのカビの見分け方をどうぞ。

ジップロック仕込みのカビ対策——空気を抜くことがすべて

近ごろは、樽ではなくジップロックなどの保存袋で味噌を仕込む方法が広まっています。手軽で場所を取らず、少量から作れるのが利点ですが、カビが出るかどうかは「空気をどれだけ抜けたか」でほぼ決まります

カビは酸素がないと育ちません。樽仕込みで表面にだけカビが出るのも、そこが唯一の空気との接触面だからです。袋仕込みは、この理屈をそのまま利用できます。

仕込む時のコツ

  • 味噌玉を袋の底から順に詰め、そのつど押しつぶして空気を抜く。ふんわり入れると、玉と玉の間に空気の部屋ができます
  • 袋の中で平らにならし、厚みを均一にする。厚みがまばらだと、薄い部分から先に熟成が進んで水分の偏りが出ます
  • 袋の口の内側についた味噌を、清潔なペーパーで完全に拭き取る。ここに残った味噌がカビの起点になりがちです
  • 口を閉じる直前に、袋を寝かせて空気を押し出す。水を張ったボウルに袋を沈めて水圧で空気を抜くやり方も使えます
  • 閉じた袋をバットに寝かせ、上から本などで軽く押さえる。袋仕込みでも軽い重しは効きます

仕込んだあとの見回り

袋仕込みの良いところは、開けなくても中が見えることです。月に一度、袋の外から表面を確認して、空気だまりができていたら口を開けて押し出し、また閉じます。この時に手や袋の口を触るので、作業前の手洗いとアルコール消毒は省かないでください。

ちなみに、袋仕込みで出てくる茶色い液体は「たまり」と呼ばれる旨みの塊で、カビではありません。捨てずに全体になじませるか、そのまま調味料として使えます。たまりが表面を覆っていると、それ自体が空気を遮る蓋の役割をしてくれるので、無理に取り除かないほうがカビにも強くなります。

そもそもカビさせないための塩梅と置き場所

仕込みの段階で決まってしまう要素があります。次に仕込む時のために、原因側を押さえておきます。

  • 塩を減らしすぎない。減塩の味噌を作りたい気持ちは分かりますが、塩は水分活性を下げてカビや雑菌が生きにくい環境を作る役割を担っています。レシピの塩分を独自に削るのは、カビのリスクを上げる方向に働きます
  • 大豆の煮汁で水分を調整しすぎない。やわらかすぎる味噌は空気を含みやすく、表面が崩れてカビの足場ができます
  • 容器・手・道具をアルコールか熱湯で消毒する。仕込みの日の30分の手間が、半年後の結果を分けます
  • 表面に塩蓋をするか、ラップを密着させる。空気を遮断できれば、カビはほぼ育ちません
  • 重しを乗せる。味噌が締まって空気が抜け、表面に上がってきた「たまり」が蓋の役割をします
  • 置き場所は、直射日光の当たらない、温度変化の少ない場所。暖房の効いた部屋や窓際は、温度が上がってカビが動きやすくなります

これから初めて仕込むという場合は、大豆・麹・塩の配合が計算されたキットから始めると、塩分を削りすぎる失敗を避けられます。容器や袋がセットになっているものもあるので、道具をそろえる手間も省けます。

まとめ:黒は酸化、白は2種類、色付きのふわふわだけが分かれ道

  1. 表面の黒っぽい変色は酸化とメイラード反応で無害です。匂いが味噌のままなら心配いりません
  2. じゃりっとする白い粒はチロシン。熟成が進んだ証拠で、取り除く必要もありません
  3. 薄い白い膜は産膜酵母。無害とされますが、風味のためにすくって取り除いてください
  4. 表面に点で出たカビは、周囲1センチ・深さ1センチを目安に大きめに取り除き、アルコールで拭いて塩蓋をすれば仕込みを続けられます。ただし安全を保証する手順ではありません
  5. 広範囲・黒緑のふわふわ・異臭・内部への侵入・ぬめりがあれば処分してください。カビ毒は加熱で分解されません
  6. 袋仕込みは空気を抜けるかどうかがすべて。口の内側の拭き取りと、月一度の空気だまりの押し出しが効きます

保存版:この記事の早見表

表面に出るもの4種類の見分けと、続けられる範囲・処分する範囲の線引きを1枚にまとめました。ふたを開ける前にスマホで開いておくと、その場で判断できます。

手作り味噌の表面に出るもの見分けカード:黒っぽい変色は酸化で無害、白いじゃりっとした粒はチロシンで熟成の証、薄い白い膜は産膜酵母ですくって取る、青緑や黒のふわふわはカビで点なら周囲1センチごと除去して塩蓋、広範囲や異臭があれば処分、カビ毒は加熱で分解されない

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