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レジの前で財布を出したら、ふたが勝手に開いて小銭がじゃらじゃら。しゃがんで拾いながら、「あぁ、もうこのボタン限界だな」と思う。あの気まずさ、経験があると分かります。長く使った財布のパチンがゆるくなって、しばらく手で押さえながら過ごす、という方も多いと思います。
先に結論をひとつ。財布のスナップボタンは、症状によって直し方がまったく違います。ちょっとゆるいだけなら、道具なしに近い形で数分で締まることもありますし、逆に「これは自分でやると財布が傷むだけ」という症状もあるんです。
だから、いきなり工具を持ち出す前に、自分の財布がどの症状かを見分けるところから始めましょう。
まず症状を4つに分ける——ここで直し方が決まります
ふたの側(凸)と、本体の側(凹)を、それぞれ指で触ってみてください。
- ①バネが弱ってゆるい。留まるけれど手ごたえが軽い、少し引っ張ると開く。金具の見た目はきれい。いちばん多い症状で、自分で直せる可能性が高いのはこれです
- ②凸側の頭が潰れている・欠けている。ぽっちの部分が平たくなっていたり、めっきが剥げて角が丸くなっていたり。押し込んでも引っかかる場所がないので、締めても留まりません
- ③台座ごとぐらぐらする・外れた。金具を指でつまむと革ごと動く、あるいはぽろりと取れて穴だけが残っている。革の穴が広がっていることが多いです
- ④革が伸びて位置がずれた。金具は無事なのに、凸と凹が正面で合わない。カードを入れすぎた財布や、長年使った革でよく起きます。ふたを少しずらすと留まるなら、これ
①なら締める、②③なら打ち替える、④なら厚みを足す。この対応表を頭に入れてから作業すると、遠回りしません。
①ゆるいだけなら——凹側の隙間を「ごくわずかに」狭める
スナップボタンの凹側(バネが入っている、へこんでいるほう)は、中で細い金属が輪のように広がっていて、凸のぽっちを抱え込む仕組みです。長く使うとこの輪が広がって、抱える力が落ちます。だから、広がった分をほんの少しだけ戻してあげるのが直し方になります。
- 凹側の穴を、明るい所でのぞいてみます。内側に細い切れ目の入った金属の輪が見えるはずです
- ラジオペンチ(先の細いペンチ)の先端に薄い布を巻きます。金具に直接当てると、めっきに傷が残ります
- 穴のふちではなく、中の輪の左右を軽くつまんで、ほんの少し狭めます。動かす量は、髪の毛の太さくらいのイメージで十分です
- 凸をはめてみて、手ごたえを確認。まだゆるければ、また少しだけ。一度で決めようとしないことが、いちばんのコツです
やりすぎると今度は硬くて開かなくなり、無理に開けた時に革のほうが裂けます。「少し足りないかな」で止めるくらいがちょうどいいです。作業中は、ペンチの持ち手に指を挟まないよう、財布を机に置いて両手で扱ってください。金具の歪みを戻す作業は、指輪の変形を直す時と考え方が似ています。指輪の歪みを自分で直す時の話も、力の入れ方の参考になると思います。
②③潰れた・外れた時は「打ち替え」——先に穴のサイズを測る
凸が潰れている、台座ごと取れてしまった。この場合はもう金具を交換するしかありません。手芸店やホームセンターで売られているバネホックという金具と、それを留めるための打ち具(打ち棒と台のセット)を使います。
- 今ついている金具の直径を測ります。ものさしを当てて、外側の丸い部分が何mmかを見てください。多いのは10〜13mm前後ですが、財布によって違います。取れてしまった場合は、革に残っている穴の直径を測ります
- 同じサイズのバネホックを買います。サイズが合わないと、穴が余ってぐらついたり、逆に入らなかったりします
- 古い金具を外します。裏側の足が広がって留まっているので、細いマイナスドライバーで少しずつ起こして抜きます。革を引っ張らず、金具側だけを動かすのがコツ
- 硬くて平らな台(金属の板や、打ち具に付いてくる台)を下に置き、革をはさんで金具をセットし、打ち棒を真上から当てて、木づちで数回たたきます。斜めに打つと金具が曲がります
- 凸と凹をはめて確認。手ごたえがあれば完成です
作業する時は、周りに人がいない場所で、テーブルの上でやってください。金具が跳ねることがありますし、木づちの音も響きます。そして小さな金具は子どもが飲み込む危険があります。作業前に数を数えて、終わったら数え直して、余りはふた付きの箱にしまう。これを習慣にしておくと安心です。
④革が伸びて位置がずれた時は「厚みを足す」
金具はきれいなのに合わない。ふたを少しずらすと留まる。これは金具ではなく、革が伸びて距離が変わってしまったのが原因です。だから金具をいじっても直りません。
- 財布の内側に、薄いフェルトや当て革を貼って厚みを足す。ふたが浮いている分を内側から押し上げると、凸と凹の距離が縮まって届くようになります。1mmで変わることも多いです
- 中身を減らす。レシートを出すだけで留まった、ということもあります
- 接着は、革用の弱い接着剤か、両面テープで。強い接着剤は革にしみて、色が変わってしまうことがあります。換気をして、子どもの手の届かない所で作業してください
やってはいけないこと4つ
- 接着剤でボタンを固める。留まるどころか、開け閉めのたびに周りの革ごと剥がれていきます。修理店に出す時も、接着剤が入っていると受けてもらえないことがあります
- 穴を広げて大きい金具を入れる。その場は留まっても、革の縁が薄くなって次は裂けます。サイズは合わせるもので、広げるものではないんです
- 革の表側にペンチの跡を付ける。革は一度へこむと戻りません。作業は必ず布を当てて、力は内側からかけましょう
- 力任せに一気に締める。金属は戻せない方向に曲がります。少しずつ、確かめながら。これはマグカップの取っ手が取れた時の直し方でも同じで、急ぐと物を余計に壊してしまいます
自分でやらないほうがいい財布と、修理店への出し方
次のどれかに当てはまるなら、手を出す前に相談したほうが、結果的に安く済むことが多いです。
- ブランドの財布や、思い入れのある高価な財布。自分で打ち替えた跡があると、そのブランドの修理窓口で断られることがあります
- 内張りが縫い込まれていて、金具の裏に手が入らない。裏側を開けないと打ち替えできないので、縫いをほどく作業になります
- 革そのものが裂けている、穴の周りが薄くなっている。金具を替えてもまた取れます。当て革をして縫い直す作業になり、これは道具と経験が必要です
出す時は、金具の全体、裏側、革の傷み具合が分かる写真を撮って、「凸が潰れている」「台座が外れて穴が残っている」というふうに症状を言葉で添えると話が早いです。金額は、店の種類(革製品専門か、靴の修理も扱う店か、そのブランドの窓口か)と、金具だけの交換か革の張り替えまで必要かで大きく変わります。ここは断定できないところなので、必ず見積もりを取ってから決めてください。2〜3軒に写真を送って比べると、相場感がつかめます。
直るまでの逃げ道——中身を落とさないために
修理に出す間や、直すまでの数日。留まらない財布をそのまま持ち歩くのがいちばん危険です。かばんの中で開いて、カードや小銭が散らばり、気づかないうちに落としてしまうこともあります。
- 幅の広いヘアゴムや、書類用のバンドを財布に一周かける。見た目は素朴ですが、確実です
- カードだけ別のカードケースに移す。落とした時の被害がいちばん大きいのはカード類です
- 現金は小銭入れを分ける。ファスナー式の小さなポーチで十分です
もし落としてしまった時の動き方は財布をなくした時の探し方と連絡の順番にまとめてあります。読まずに済むのがいちばんですが、順番を知っているだけで慌てずにすみますよ。
ゆきこ( ゚Д゚)『パチンがゆるくなった財布に輪ゴムを巻いてしのいでいたら、レジで輪ゴムが切れて小銭が飛んだ、という話を読んで、ひやっとしました。後ろに並んだ方に拾ってもらう気まずさは、想像するだけで十分です。ゆるいまま我慢するの、正直おすすめしません』
自分で打ち替えるなら、金具と打ち具がひとまとめになったものを選ぶと、サイズ違いで買い直さずに済みます。自分なら、対応する革の厚み、金具の直径、台と打ち棒が付いているかの3つを見て選びます。ジーンズの補修などにも同じ道具が使えるので、1つあると出番は意外とあるんです。穴の補修の考え方はジーンズの穴を自分で補修する話にも書いています。
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身のまわりの「金具が言うことを聞かない」問題は、力の入れ方でだいたい決まります。指輪の歪みを自分で直す時の話は、少しずつ動かすコツの話。マグカップの取っ手が取れた時の直し方では、接着剤で急いで失敗しないための考え方を書きました。革や布の穴を自分でふさぐならジーンズの穴を自分で補修する話もどうぞ。
まとめ:症状を分けてから、いちばん軽い手当てを選ぶ
- 症状はゆるい・潰れた・外れた・位置がずれたの4つ。直し方が違います
- ゆるいだけなら凹側をごくわずかに狭める。布を当てて少しずつ、が鉄則です
- 潰れた・外れたは穴の直径を測ってからバネホックで打ち替えます
- 接着剤で固めない、穴を広げない。高価な財布は迷わず修理店へ相談を
- 金額は店で違うので見積もりを取る。直るまではバンドで留めて逃がしましょう
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手順を1枚にまとめました。



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