中華鍋がサビた時、落としていいサビと落としてはいけないサビがあります——見分けは色とさわり心地

家事

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しばらく使っていなかった中華鍋を戸棚から出したら、内側に赤茶色がぽつぽつ浮いていた。あるいは全体がうっすら茶色くくすんでいて、指でなぞるとザラッとした感触が返ってくる。鉄の中華鍋を持っている人なら、たぶん一度は見たことのある景色だと思います。

ここで手が止まってしまうのは、たいてい「どこまで落としていいのか分からない」からです。ネットで調べると、片方には「金たわしでガリガリ落とせば直る」と書いてあり、もう片方には「黒いのは大事な膜だから絶対に落とすな」と書いてある。どちらも間違ってはいなくて、落としていいサビと、落としてはいけないサビの、二種類が存在しているだけなんです。

この記事では、まずその二つの見分け方から入って、落とすべき赤サビの取り方、そのあとの空焼きと油ならし、そして二度と同じことにならない使い方までを順番にまとめました。中華鍋は薄いので、同じ鉄でもスキレットとは火の入れ方がまるで違ってきます。そこも途中で書き分けています。

おとすサビと のこすサビがある赤サビ = おとす赤茶色でザラザラ。こすると粉が指につきます黒サビ = のこす・そだてる黒〜青く光る皮膜。鉄を守る膜なので残しますまよったら 白いふきんで軽くこする赤茶色がつけば赤サビ。何もつかなければ黒サビおとしたあと = からやき → あぶらならし鉄はけずってよい素材。落としても作り直せます※空焼きは必ず換気。IHは機種により禁止です

まず、赤サビか黒サビかを見分けるところから

サビという言葉でひとくくりにされていますが、鉄の表面に出てくる酸化物には性格の違う二種類があります。ここを取り違えると、せっかく育った膜をこそげ落としてしまったり、逆に落とすべきものを残して穴の原因を育ててしまったりします。

見分けるポイントは、色とさわり心地の二つです。

赤サビは、名前のとおり赤茶色からオレンジがかった茶色をしています。表面が粉っぽく、指でこすると赤茶色の粉がわずかに指先につきます。触るとザラザラして、ひどくなると小さなブツブツが盛り上がってきます。これは鉄が水分と酸素に触れて酸化したもので、そのまま置いておくと下へ下へと進んでいく、いわば進行するサビ。落とす対象はこちらです。

黒サビのほうは、黒からやや青みがかった黒で、光を当てるとぬめっとした艶が出ます。粉は出ませんし、こすっても指に色が移りません。さわると、ザラつきよりも「すべっとした硬さ」を感じます。これは鉄の表面にできた緻密な酸化被膜で、下の鉄が空気と水に触れるのを物理的にふさいでいる状態。つまり赤サビを防ぐ側の存在です。

迷った時にいちばん確実なのは、白いふきんやキッチンペーパーで軽くこすってみること。赤茶色がつけば赤サビ、何もつかずに黒いままならその部分は健康な黒サビか油膜です。中華鍋の場合、使い込むほど鍋肌が黒く落ち着いてくるのはこの膜が育っているからで、あれを新品の銀色に戻す必要はまったくありません。

ゆきこ( ゚Д゚)『黒いの、汚れだと思ってこすってた…』

黒サビを落としてはいけない理由

黒く見えているものが二つ重なっている、と考えると分かりやすいと思います。ひとつは鉄そのものが酸化してできた黒い被膜、もうひとつはその上に炒め物のたびに乗って重合した油の膜です。この二層が鍋肌を覆っている状態が、鉄の中華鍋のいちばんいい顔になります。

油膜のほうは、加熱によって油が変化して樹脂のような薄い層になったもの。水をはじくので、水分が鉄に届きません。黒サビの被膜も緻密で、こちらは酸素の侵入を止めます。赤サビの材料は水と酸素なので、その両方を止めている限り、赤サビは出ようがないという理屈です。

ですから、黒くなった鍋肌をクレンザーで磨き上げてしまうと、守りが二枚とも剥がれた素の鉄がむき出しになります。その状態で流しに置いておけば、翌日には赤サビが出ていてもおかしくありません。黒サビは落とすものではなく、育てるものという言い方をされるのは、こういう事情です。

この考え方は焦げ付きの話ともつながっていて、油膜が育っている鍋ほどくっつきにくくなります。日々の手入れで膜をどう保つかは中華鍋の焦げ付きと手入れのほうに詳しく書いています。

赤サビの落とし方——鉄は削ってよい素材です

赤サビが出ていたら、こちらは遠慮なく落として大丈夫です。というより、鉄は台所道具のなかでいちばん荒っぽい扱いが許される素材です。

理由は単純で、削っても中身が変わらないから。サビは表面のごく浅いところで起きている現象なので、その層をこそげ取れば、下からは何も変わっていない鉄が出てきます。土鍋やホーロー鍋、フッ素樹脂加工のフライパンでは、表面を削った時点でその鍋の機能そのものが失われますが、鉄にはその心配がありません。同じ理屈で焦げ付きも削って戻せて、そのあたりは鉄フライパンの焦げを落として復活させる手順と共通しています。

用意するもの

  • クレンザー(粉末のもの)——研磨材が入っているので、サビの層を物理的に削り取れます
  • 金たわし、またはステンレスたわし——広い面を一気にこするのに向いています
  • 耐水ペーパー(240〜400番程度)——ブツブツと盛り上がった部分をならす時にあると便利です
  • ゴム手袋——金たわしで手を切りやすいので、あったほうが安心です

落とす手順

鍋を水でぬらして、サビている場所にクレンザーをふりかけます。粉が湿って少しペースト状になったところで、金たわしを当ててこすっていきます。この時、力任せに一点を掘るのではなく、円を描くように面で動かすほうがきれいに仕上がります。一点だけ強くこすると、そこだけ深くえぐれて凹凸ができてしまうためです。

赤茶色の粉が出なくなり、その部分が銀色に近い地肌になったら落ちた合図です。指でなぞってザラつきが残っていないかも確かめてみてください。ブツブツが盛り上がっていた場所は、平らになるまで耐水ペーパーでならすと、あとで油膜が均一に乗ります。

落とし終わったら、洗剤で油分ごと洗い流します。ここは、いつもの手入れと逆になるところです。ふだんの中華鍋は油膜を守りたいので洗剤を使いませんが、この再生作業の時だけは、削りかすとサビの粉を残さないために洗剤でしっかり洗うほうがうまくいきます。

そして洗ったら、その場ですぐ火にかけて水気を飛ばしてください。無防備な鉄の状態で水を置いておくと、数十分でも赤サビが再発します。ここから空焼きへ、途切れさせずに進むのが理想です。

なお、削っても戻らないのは、サビが貫通して穴が開いてしまった鍋だけです。光にかざしてみて向こう側が見える、押すとベコッとへこんで戻らない、といった場合は買い替えを考える段階になります。鉄の中華鍋は北京鍋(片手)と広東鍋(両手)で扱いやすさが違うので、選び直す時はそこも見てみてください。

買い替えを迷っている段階なら、鉄の中華鍋そのものが自分の台所に合っているかを一度整理しておくのもいいと思います。重さや収納のことは中華鍋のデメリットにまとめました。

空焼き——スキレットとは火加減が逆になります

サビを落とした直後の鍋は、守りの膜がぜんぶ剥がれた状態です。ここで空焼きをして、鉄の表面に新しい酸化被膜を作り直します。何も入れずに火にかけて、鍋肌の色が変わるまで加熱する作業です。

安全メモ:空焼きは必ず換気をしながら行ってください。残った油分が焼け飛ぶため、白い煙とにおいが必ず出ます。換気扇を強で回し、可能なら窓も開けてください。火災警報器が反応することがあるので、位置も先に確認しておくと落ち着いて作業できます。そして、取っ手は必ず乾いた厚手の布か鍋つかみで持ってください。木の柄でも金属の芯を伝って熱くなりますし、鉄柄なら数分で素手では持てない温度になります。濡れた布は蒸気でやけどをするので使わないでください。IHでの空焼きは、機種によって禁止されています。空だきを検知して停止する機能があるほか、トッププレートの耐熱を超えて割れる危険があるため、必ずお使いのIHの取扱説明書で可否を確認してください。禁止されている場合は、カセットコンロなどの直火で行ってください。

中華鍋が「薄い」ことの意味

ここが、同じ鉄でもスキレットと決定的に違うところです。

スキレットのサビ取りで同じ流れを書きましたが、スキレットは鋳鉄のかたまりで、厚みが5mm前後あります。熱がゆっくり入ってゆっくり出ていく、いわば蓄熱するタイプ。だから空焼きは弱火から中火でじっくり、時間をかけて全体の温度を上げていきます。急に強火をあてると、厚いぶん内側と外側に温度差ができて割れる心配もあります。

一方の中華鍋は、鉄板をプレスした1mm台の薄い鍋です。熱がすぐ入って、火から外すとすぐ冷める。この差が、そのまま空焼きのやり方の差になります。

  スキレット(鋳鉄・厚い) 中華鍋(鉄板・薄い)
板厚の目安 4〜6mm 1.0〜1.6mm
火加減 弱火〜中火でじっくり 中火。強火の一点集中は避ける
時間の感覚 10分以上かけて全体を温める 1か所あたり数十秒。全体で数分
鍋の動かし方 置いたままでよい 絶えず傾けて火の当たる場所を移す
いちばんの失敗 温度が上がりきらない 1か所だけ焼きすぎて変色・変形

つまり中華鍋の空焼きは、短い時間で、鍋を動かしながら、全体を均一に回すのがすべてです。丸い底の一点をコンロの上に置きっぱなしにすると、そこだけ数十秒で焼けすぎて、青黒く変色したり最悪ゆがんだりします。柄を持って鍋をゆっくり傾け、底の中心から縁のほうへ、火の当たる場所を少しずつずらしていってください。

色の変化が目安になります。銀色だった鉄肌が、加熱につれて薄い黄色から茶色、そして青みがかった灰色へと移り変わっていきます。青っぽくなった場所は焼けている証拠なので、そこはもう火から外して次の場所へ。全面がその色になったら空焼きは完了です。

薄いぶん、焦がしすぎのリスクも高くなります。煙がもうもうと立ちのぼるほど加熱する必要はありません。全体が均一に色を変えることのほうが、強く焼くことより大事だと考えてください。

油ならし——くず野菜を炒めるのには理由があります

空焼きが終わったら、鍋を少し冷ましてから油ならしに移ります。多めの油を入れて、鍋肌全体に行き渡らせる作業です。

手順としては、鍋にお玉1〜2杯ほどの油を入れて弱めの中火にかけ、油が温まったら鍋を傾けて縁のほうまで油を回します。全体に油がなじんだら火を止めて、余った油はオイルポットなどに戻します。最後にキッチンペーパーで薄く伸ばして終わりです。

ここでくず野菜を炒めるという手順がよく登場します。キャベツの芯や外葉、長ねぎの青いところ、にんじんの皮といった捨てる部分を、油と一緒にしばらく炒めるものです。おまじないのように見えますが、いくつか実利があります。

  • 鉄くささを取る——空焼き直後の鍋には金属のにおいが残ります。野菜の水分と香りがそれを和らげます
  • 油を鍋肌全面に運ぶ——野菜が油をまといながら鍋の中を動くので、お玉で回すより細かいところまで油が届きます
  • 削りかすを拾う——耐水ペーパーの粉や細かいサビが残っていた場合、野菜がそれを絡め取ってくれます
  • 温度がゆるやかになる——水分のある野菜が入ることで急激な高温になりにくく、薄い中華鍋には向いています

炒めた野菜は食べずに処分してください。焦げ茶色になるまで数分炒めたら、それで役目は終わりです。そのあと軽くお湯で流し、水気を飛ばして薄く油を塗れば、再生はひととおり完了になります。

ここから数回は、油を多めに使う料理から使い始めるとうまく育ちます。いきなり水分の多い煮込みや、酸の強いトマト料理を入れると、できたばかりの薄い膜が持っていかれます。チャーハンや野菜炒めのような、油をたっぷり使って高温で短時間、という料理がいちばん相性がいいです。

サビを繰り返さないための、ふだんの使い方

せっかく再生しても、しまい方が同じならまた同じことになります。赤サビの材料は水と酸素なので、水を残さないことがほとんどすべてです。

洗剤は使っていいのか

ここはよく迷うところですが、ふだんの洗いでは洗剤を使わないほうが油膜が保てます。中華鍋は使い終わったら、熱いうちにお湯を張って、竹ささらか固めのブラシで汚れを落とすのが基本です。油汚れはお湯だけでかなり落ちますし、洗剤を使うと守りの油膜まで一緒に流れてしまいます。

ただし例外もあって、魚を焼いた後や、においの強いものを作った後、そして今回のようなサビ取りの直後は、洗剤で洗ってかまいません。洗剤を使ったら、そのぶん最後に油を塗り直せばいいと考えれば気が楽になります。洗剤が絶対に悪いのではなく、油膜が落ちた状態で放置するのが問題、というだけの話です。

乾燥は「拭く」ではなく「火にかける」

ふきんで拭くだけでは、鍋肌の細かい凹凸に水分が残ります。洗い終わったら中華鍋を火にかけて、水滴が完全に消えるまで加熱してください。数十秒で湯気が上がらなくなり、鍋肌がさらっとします。薄い鍋なので、この作業が一瞬で終わるのは中華鍋の長所です。

その後、キッチンペーパーに油を少し取って、内側に薄く塗ります。べったり塗ると、次に出した時に油が酸化してベタつきや嫌なにおいのもとになるので、あくまで薄くひと拭きで十分です。

しまう場所も効いてきます

乾かして油を塗っても、湿気のこもる場所に密閉して置けばサビます。シンク下は水道管が通っていて湿度が高くなりやすい場所なので、鉄鍋の定位置としては相性がよくありません。吊るせる家ばかりではないので、その場合の代替は中華鍋の保管方法にまとめました。重ねてしまう時に紙を一枚はさむだけでも、蒸れ方がずいぶん変わります。

長期間使わないことが分かっているなら、油を塗ってから新聞紙で包んでおくと、紙が湿気を吸ってくれます。ラップやビニール袋で密閉するのは逆効果で、内側に湿気を閉じ込めることになります。

サビの状態から手当てを引く早見表

いま鍋がどんな状態かによって、やることが変わります。上から順に、手間の軽いものを並べました。

今の状態 正体 やること
鍋肌が黒く落ち着いて艶がある 黒サビと油膜(健康な状態) 何もしない。洗剤で磨かない
青みがかった黒で、粉が出ない 酸化被膜 残す。そのまま使ってよい
赤茶色の点がぽつぽつ浮いている 初期の赤サビ クレンザーと金たわしで落とし、油ならし
全体が赤茶色でザラザラする 進行した赤サビ 全面を削る→空焼き→油ならしでリセット
ブツブツと盛り上がっている 深く進んだ赤サビ 耐水ペーパーで平らにならしてから空焼き
使うたびに黒い汚れが手につく 油膜が炭化して浮いている お湯とささらで落とし、油ならしをやり直す
穴が開いた・押すとへこんで戻らない サビの貫通・変形 加熱中の破損につながるため使用をやめる

上の二行に当てはまるなら、今日やることは何もありません。三行目から下が、はじめて手を動かす場面になります。

まとめ:落とすものと守るものを取り違えなければ大丈夫

  1. 赤サビは赤茶色でザラつき、粉が指につきます。これは落とす対象。放っておくと下へ進みます
  2. 黒サビは黒〜青光りする艶のある皮膜で、粉が出ません。これは残す対象。油膜と二枚で鉄を守っています
  3. 迷ったら白いふきんで軽くこする。赤茶色がつけば赤サビ、何もつかなければ黒サビです
  4. 鉄は削ってよい素材。クレンザーと金たわしで落とし、空焼きと油ならしで作り直せます
  5. 中華鍋は薄いので、空焼きは短時間で全体を回す。厚くて蓄熱するスキレットの弱火でじっくり、とは逆の火加減になります
  6. 空焼きは必ず換気してください。取っ手は乾いた厚手の布で持ち、やけどに注意してください。IHでの空焼きは機種によって禁止されているので、取扱説明書を確認してください
  7. ふだんは洗剤を使わず、洗ったら火にかけて水気を飛ばし、薄く油を塗る。しまう場所は湿気の少ないところへ

保存版:この記事の早見表

赤サビと黒サビの見分けから再生の手順までを1枚にまとめました。スマホに保存しておくと、戸棚から出した鍋を前にして迷った時にすぐ確かめられます。

中華鍋のサビ早見カード:赤茶色でザラつき粉が出る赤サビは落とす、黒く青光りして粉が出ない黒サビは鉄を守る膜なので残す、迷ったら白いふきんでこする、落とした後はクレンザーと金たわし→空焼き→油ならし、中華鍋は薄いので短時間で全体を回す、空焼きは換気必須でIHは機種により禁止

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