※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれています。
ゆうべ使った中華鍋を今朝出したら、内側にうっすら赤茶色が浮いていた。ちゃんと洗って、ちゃんと拭いて、いつもの場所にしまっただけなのに。鉄の鍋を使っていると、たぶん一度は起きることだと思います。
ここで見落とされがちなのが、鉄鍋がサビるのは、火にかけている時間ではなくて、しまわれている時間のほうだということです。調理中は水分がどんどん飛んでいくので、サビの材料である水が鍋に留まりません。ところが戸棚に入れたあとは、拭き残した水分も、空気中の湿気も、行き場がないまま鍋のそばに居続けます。サビの進行は、じつは何時間もかけて棚の中で起きているんです。
そして、中華鍋の保管について調べると出てくるのは、たいてい「壁に吊るしましょう」という答えです。中華料理屋さんの厨房のあれですね。理屈としてはいちばん正しいのですが、賃貸だと壁にフックが打てないし、そもそも吊るせる壁がないという家のほうが多いと思います。この記事では、しまう前の準備を理由から押さえたうえで、吊るせない家でどう置くかというところに時間を使います。
しまう前の3手順と、それぞれの理由
置き場所の話に入る前に、どうしても外せない準備が三つあります。手順としては短いのですが、ひとつでも抜けると、どんなにいい場所に置いてもサビます。理由のほうを知っておくと、忙しい日に省いていいところと省けないところが分かるようになります。
1. 洗う——落とすのは食べ物の残り、残すのは油膜
使い終わった中華鍋は、熱が残っているうちにお湯を張って、竹ささらか固めのブラシで汚れを落とすのが基本です。熱いうちだと油汚れがゆるんでいるので、お湯だけでするりと落ちます。
ふだん洗剤を使わないのは、鍋肌に育っている油膜まで一緒に流してしまうからです。この膜は水をはじくので、しまっている間に湿気が鉄へ届くのを防いでくれます。洗いすぎた鍋ほどサビやすくなるのは、守りを自分で落としているためです。
とはいえ、魚を焼いたあとや、においの強いものを作ったあとは洗剤を使ってかまいません。そのときは最後に油を塗り直せば帳尻が合います。洗剤が悪いのではなくて、膜が落ちた状態のまましまうのが問題という順序です。
2. 火にかける——拭くのと乾かすのは別のことです
ここがいちばん抜けやすくて、いちばん効く手順です。ふきんで拭いただけの鍋は、乾いていません。
鉄の鍋肌は、見た目には平らでも、細かい凹凸が無数にあります。ふきんの繊維はその凹みの底までは入らないので、表面の水滴だけが取れて、凹みの中の水は残る。しかも残った水は少量なので、そのぶん濃く酸素を含んでいます。サビの材料である水と酸素が、鍋肌に薄く貼りついたまま棚に入っていく状態になります。
これを確実に消すには、熱で飛ばすしかありません。洗い終わったら中華鍋を火にかけて、湯気が上がらなくなるまで加熱してください。中華鍋は板が薄いので、この作業は数十秒で終わります。手のかかる道具だと言われがちな鉄鍋のなかで、ここは中華鍋がいちばん得意なところです。鍋肌がさらっとして、水滴の跡が消えたら十分です。
湯気が消えたあともずっと加熱し続ける必要はありません。やけどを避けるため、取っ手は必ず乾いた厚手の布か鍋つかみで持ってください。濡れた布は蒸気でやけどをするので使わないでください。
3. 油を薄く塗る——「薄く」がそのまま安全の話になります
水気が飛んだら、キッチンペーパーに油を少し取って、内側に薄くひと拭きします。油は水をはじくので、棚の中の湿気が鉄に触れるのを物理的にさえぎってくれます。
ここで大事なのが量です。油をたっぷり塗ったまま長期間しまうと、油が空気中の酸素と反応して酸化し、ベタベタした樹脂のような膜になります。触ると指にまとわりつき、古い油特有のにおいが出て、次に使うときには洗剤で落とすところからやり直しになります。塗る量はキッチンペーパーで拭き取ったあとに残るくらい、光の当たり方でうっすら艶が見える程度で十分です。
塗ったあとにもう一度きれいなペーパーで軽く拭き取るくらいが、ちょうどいい厚みになります。塗るというより、油をなじませて余分を取ると考えると近いです。
吊り下げられない家での置き方
さて、ここからが本題です。準備が終わった中華鍋を、壁に吊るせない家でどこに置くか。
吊るす方法が推される理由は、単純です。鍋のまわり全部に空気が触れるから。上下も内も外も風が通るので、わずかに残った湿気が抜けていきます。ということは、吊るせない家でも「接している面を減らす」「空気の通り道を作る」という二つを満たせば、近いところまで持っていけます。
立てて置く——接する面をいちばん減らせます
棚や引き出しの中で、鍋を寝かせるのではなく立てて置くやり方です。鍋が底面ではなく縁の一点で棚板に触れる形になるので、接地面が最小になります。鍋の内側にも外側にも空気が回るので、吊るすのにいちばん近い状態が作れます。
中華鍋は丸底で不安定なので、そのまま立てかけると滑って倒れます。ここは鍋の収納スタンドの出番になります。フライパンや鍋ぶたを縦に仕切って立てるためのラックで、シンク下や棚の中に置いて使うタイプが一般的です。仕切りの幅が可変になっているものだと、深さのある中華鍋も差し込めます。
選ぶときは、仕切りの間隔と、スタンド自体の高さを見てください。中華鍋は口径が30cm前後あるので、フライパン用の浅いスタンドだと上がはみ出して不安定になります。ワイヤーが太くて自立するタイプのほうが、重い鉄鍋を差しても倒れにくいです。
重ねるなら、紙か布を一枚はさみます
場所の都合でどうしても重ねる場合は、鍋と鍋のあいだにキッチンペーパーか、使い古しの薄い布を一枚はさんでください。ここには理由が二つあります。
ひとつは、湿気を吸わせるため。金属どうしが直に密着すると、そのすき間に入った湿気が逃げ場を失って、いちばん抜けにくい場所になります。紙や布があいだにあると、湿気がそちらへ移って、鉄の表面から離れてくれます。
もうひとつは、油膜を守るためです。重ねた鍋を出し入れするたび、上の鍋の底が下の鍋の内側をこすります。せっかく育った膜がその摩擦で削れて、削れたところから先にサビが出る、ということが起こります。紙一枚はさむだけで、この摩擦がなくなります。
ゆきこ( ゚Д゚)『紙一枚でよかったのか…と、しばらく固まりました』
シンク下に置くのがすすめられない理由
収納スタンドを買うとシンク下に置きたくなると思うのですが、鉄の中華鍋の定位置としては、シンク下はいちばん条件が悪い場所です。
理由は三つ重なっています。まず、すぐ上で毎日大量のお湯を使うので、シンクの底板が温まったり冷えたりを繰り返します。次に、排水管が通っていること。管の中を流れる水は外気より冷たいので、湿った空気が管の表面で冷やされて結露します。そして扉で閉じられていて空気が動かないこと。入ってきた湿気が出ていけません。
安全メモ:シンク下のような湿気のこもる場所に、鉄鍋を密閉した状態で長期間置かないでください。結露した水滴が鍋に落ちると、その一点から赤サビが進みます。どうしてもシンク下しか場所がない場合は、扉を時々開けて空気を入れ替え、鍋を排水管から離して置き、下に新聞紙を敷いて湿気を吸わせてください。
置き場所の向き不向き
| 置き場所 | 向き不向き | 理由と、置くときの工夫 |
|---|---|---|
| 壁のフックに吊るす | いちばん向いています | 全面に空気が触れます。油はねのかからない位置に |
| 収納スタンドで立てる | 向いています | 接地が一点ですみます。仕切りの幅を確認してください |
| コンロ脇に出しっぱなし | 意外と向いています | 空気が動くうえ、使う頻度も上がって膜が育ちます |
| 吊り戸棚の中 | まずまず | 位置が高く湿気が届きにくい。重ねるなら紙を一枚 |
| オーブンや魚焼きグリルの中 | おすすめしません | 使い忘れて加熱すると危険です。柄が溶ける恐れも |
| シンク下(扉を閉めきり) | 向いていません | 排水管の結露と空気のよどみ。新聞紙と換気で補います |
| ビニール袋やラップで密閉 | 向いていません | 湿気を閉じこめます。包むなら紙にしてください |
三行目に少し驚かれるかもしれませんが、鉄の中華鍋にとっては「出しっぱなし」がわりといい保管方法です。空気が通りますし、目に入るので使う回数が増えます。使う回数が増えれば油膜が育って、放っておいてもサビにくい鍋になっていきます。油はねが直接かかる位置と、お子さんの手が届く位置だけ避けられるなら、選択肢に入れていいと思います。
しばらく使わないときの保管
数週間から数か月使わないと分かっている場合は、ふだんのしまい方に少し足す必要があります。短期の保管と長期の保管では、いちばん怖いものが入れ替わるからです。
短期でいちばん怖いのは、拭き残した水分によるサビ。長期でいちばん怖いのは、塗った油が酸化してベタつくことです。油は空気に触れている時間が長いほど酸化が進み、粘りのある膜に変わっていきます。ふだんより厚めに塗って万全に、と考えると、かえって困った状態になります。
| 使わない期間 | 油の量 | 包み方と置き方 |
|---|---|---|
| 数日〜1週間 | ふだんどおり薄く | そのまま。通気のある場所に置いてください |
| 2週間〜1か月 | 薄く、拭き取って余分を残さない | 新聞紙で軽く包み、月に一度は出して確かめます |
| 2〜3か月 | 薄く。厚塗りはしないでください | 新聞紙で包み、乾いた場所へ。密閉はしません |
| 半年以上 | 薄く塗り、出したら塗り直す前提で | 新聞紙で包み、季節の変わり目に一度確認します |
包む材料は新聞紙がいちばん扱いやすいです。紙は湿気を吸って、乾いた時にはまた放してくれるので、鍋のまわりの湿度をゆるやかに保ってくれます。キッチンペーパーやさらしの布でも同じ働きをします。
逆に、ラップやビニール袋での密閉はしないでください。包んだ時点の湿気がそのまま中に閉じこめられて、外に出られなくなります。気温が下がる夜に袋の内側で結露して、その水が鍋の上で朝まで留まる、ということが起きます。守るために包むのに、いちばんサビやすい環境を作ってしまうので、ここは気をつけたいところです。
長く寝かせた鍋を久しぶりに出したときは、使う前にお湯で洗って、火にかけ、油を新しく塗り直してから調理に入ってください。表面に残っているのは何か月も酸化した古い油なので、そのまま炒め物をすると味に出てしまいます。
季節と場所——梅雨と、窓ぎわの結露
同じ置き場所でも、時期によって条件が変わります。特に気にしたいのが二つあります。
ひとつは梅雨です。湿度が高い時期は、しまう前に水気を飛ばしても、棚の中の空気そのものが水分を多く含んでいます。この時期だけは、油を塗る手順を省かないことと、棚の扉を時々開けて空気を入れ替えることで対応してください。除湿剤を棚に入れるのも効きます。梅雨に入る前に一度鍋の状態を見ておくと、そのあとが楽になります。
もうひとつが冬の窓ぎわ。キッチンの窓の近くに棚がある間取りだと、外気で冷やされた窓ガラスのそばに冷たい空気だまりができて、そこで結露が起きます。窓に近い棚は、家の中でいちばん温度が低くなる場所だと考えてください。冬のあいだだけでも、鍋の定位置を部屋の内側寄りに動かせると安心です。
暖房を使う季節は、部屋の中の温度差も大きくなります。暖かい部屋の空気が冷たい棚の中に入ると、そこで水滴になる。この仕組みは窓の結露とまったく同じです。冷たい場所ほど結露するとだけ覚えておくと、危ない置き場所の見当がつくようになります。
しまい方で失敗したときのリカバリー
気をつけていても、出張や旅行で間があいたり、梅雨をまたいだりすると、赤茶色が浮くことはあります。ここで慌てて捨てなくて大丈夫です。鉄は削って作り直せる、台所道具のなかでいちばんタフな素材です。
ざっくり言うと、指でなぞってザラつく程度の赤茶色なら、クレンザーと金たわしで落として、火にかけて油をなじませれば戻ります。全体が茶色くくすんでいる場合も、面積が広くなるだけで手順は同じです。ただし、黒く落ち着いた艶のある部分は落としてはいけません。あれは鉄を守っている皮膜のほうで、こすり落とすと素の鉄がむき出しになります。
この見分け方と、落としたあとの空焼き・油ならしの手順は中華鍋のサビの記事にまとめてあります。中華鍋は薄いので、厚みのある鉄鍋とは空焼きの火加減が変わってくるところも、そちらで書き分けました。
それから、サビが貫通して穴が開いた鍋と、押すとへこんだまま戻らない鍋だけは、加熱中の破損につながるため使用をやめてください。買い替えを考える段階になったら、北京鍋と広東鍋の違いや板厚の選び方を中華鍋のデメリットの記事に整理しているので、参考にしてみてください。置き場所の都合で選ぶサイズが変わることもあります。
まとめ:乾かすことと、風を通すことの二つです
- 鉄鍋がサビるのは、しまわれている時間のほう。準備と置き場所でほとんど決まります
- ふだんの洗いは、お湯とささらで。洗剤は油膜まで落とします
- 拭くことと乾かすことは別。火にかけて、湯気が上がらなくなるまで数十秒
- 油はごく薄く。厚く塗って長く置くと酸化してベタつきます
- 吊るせない家は「立てる」。収納スタンドで接地を一点にすると風が通ります
- 重ねるなら紙か布を一枚。湿気を吸わせて、油膜の摩擦も防げます
- シンク下に密閉して長期保管しないでください。排水管の結露と、空気のよどみが重なります
- 長期保管は新聞紙で包む。ラップやビニールでの密閉はしないでください
- 梅雨と冬の窓ぎわは条件が変わります。棚の空気を入れ替え、冷える場所を避けてください
保存版:この記事の早見表
しまう前の手順と、置き場所の向き不向きを1枚にまとめました。キッチンに立ったまま確かめられるので、スマホに保存しておくと便利だと思います。



コメント