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子どもの給食袋のゼッケンをつけようとして、あるいは出かける直前にシャツの襟の折れに気づいて、アイロンを出したところで手が止まる。台がない。買うほどでもないし、そもそも今すぐ必要で。——この記事は、まさにその状態のためのものです。
調べると「バスタオルでいけます」という答えはすぐ見つかるのですが、なぜそれでいいのか、どこまでは大丈夫でどこからが危ないのかまでは書かれていないことが多いです。そのままテーブルの上でやってしまって、天板に白い跡が残った、という話も本当によく聞きます。
そこでこの記事では、アイロン台が果たしている仕事を3つに分けて、手持ちのものや100円ショップのものがその3つをどれだけ満たすかで見ていきます。この見方さえ持っておくと、家にある知らないものを前にしても、自分で判断がつくようになります。
アイロン台の仕事は3つあります
あの見慣れた楕円の台は、地味な見た目のわりに3つの役割を同時にこなしています。代用品を探すというのは、この3つをどう分担させるかを考えることとほとんど同じです。
ひとつめが平らであること。アイロンはかける面が平らでないと、布に均一に圧がかかりません。ふかふかしすぎている場所だと、アイロンを押した分だけ下が沈んでしまって、押し当てているようで実は圧が逃げています。シワが伸びきらずに何度も往復するはめになるのは、たいていここが原因です。
ふたつめが熱に耐えること。アイロンの底面は、綿の設定でおよそ180度から210度、化学繊維の低温設定でも100度前後まで上がります。スチームとして出てくる蒸気も100度を超えています。つまり代用品には、その熱がしばらく当たっても変質しないことが求められます。
みっつめが、意外と知られていない蒸気を逃がすこと。アイロン台の表面をよく見ると、細かい穴が開いていたり、中がメッシュ状になっていたりします。スチームで出た水分は布を通り抜けて下に落ちるので、その水分が下でこもらずに抜けていく作りになっているのです。逃げ道がないと、水分が布の裏側に戻ってきて、かけたそばから湿ってしまいます。
市販のアイロン台は、綿のカバーの下にクッション材、その下に穴あきの板、という順番で、この3つをきれいに両立させています。代用品はどうしてもどこかが欠けるので、欠けている部分を自分で補うか、そこを使わずに済ませるかという工夫になります。
今日1回だけしのぐなら、バスタオルが早いです
いちばん手軽で、失敗が少ないのがこれです。厚手のバスタオルを4つ折りにして、2枚から3枚重ねる。それだけで、3つの条件のうち「熱に耐える」と「蒸気を逃がす」の2つはほぼ満たせます。
綿のタオルが熱に強いのは、繊維そのものが天然の綿だからです。溶けるということが起きません。そして織物なので繊維の隙間が多く、スチームの水分はタオルの層に吸われて広がっていきます。専用の台ほど効率よくは抜けませんが、家庭で数枚のシャツをかける程度なら十分に間に合います。
弱いのは「平ら」のところです。タオルは押せば沈みますし、折り目のところに段差ができます。そこで、次の3つをやっておくと仕上がりが変わってきます。
- 折り目の段差を、かける場所から外す——タオルを広げて、いちばん平らな面が真ん中にくるように置きます
- 床ではなく、しっかりした板の上に敷く——次の章で書きますが、これがいちばん効きます
- タオルの上に、いらなくなったシーツや薄い綿の布を1枚かぶせる——タオルの毛足の凹凸が布に写るのを防げます
とはいえここで大事な注意があります。バスタオルの下に何を置くかで、安全性がまるで変わります。
安全のための確認:タオルを敷いたとしても、カーペット、布団、ソファ、ベッドの上でアイロンをかけないでください。これらは中に空気を多く含んでいるため熱がこもります。表面のタオルが熱くならなくても、下の層に熱が蓄積して、変色や焦げ、最悪の場合は発火の原因になります。アイロンをかける場所は、下が燃えない・熱がこもらない構造であることが前提になります。
100均で買えるもの——アイロンマットという選択肢
100円ショップにも、アイロン関連の売り場があります。時期にもよりますが、洗濯用品やアイロンのコーナーに置かれていることが多いです。ただ、はじめにお伝えしておきたいことがあります。100円ショップの品揃えは店舗や時期によって大きく違います。同じチェーンでも、大型店にはあって小型店にはない、季節が変わると棚から消える、ということが普通に起こります。ここで挙げるものも「見つかったらラッキー」くらいの気持ちで探してもらえたらと思います。
探す価値があるのは、次のようなものです。
- アイロンマット・アイロンシート——耐熱の生地でできた、折りたためる敷物です。裏にアルミ蒸着が施されていて熱を反射するタイプもあります。名前は店によってまちまちです
- アルミの保温シート・断熱シート——本来はレジャーや窓の断熱用ですが、耐熱表示があるものは下敷きとして使えることがあります。ただし薄いポリエチレン系の発泡素材が使われているものは熱で縮みますので、表示の確認が必要です
- 厚手のフェルト・キルティング生地——手芸コーナーにあります。綿やウールの天然繊維であれば、タオルの代わりのクッション材になります
- 木の板・カッティングボード——これが実は隠れた本命です。下に敷く「平ら」を担当してもらいます
この中で、いちばん組み合わせが効くのが木の板とタオルの合わせ技です。厚みのある木の板を土台にして、その上にバスタオルを重ねる。板が「平ら」を、タオルが「熱に耐える」と「蒸気を逃がす」を受け持つので、3つの条件が一度にそろいます。板は薄いと反るので、できるだけ厚みがあるものを選ぶと安定します。
耐熱をうたったアイロンマットは、そのまま敷いてすぐ使えるのが利点です。ただし柔らかいので、下がテーブルや床なら板を挟んでほしいですし、下が沈む場所ならやはり平面は甘くなります。
- アイロンマット(耐熱表示のあるもの。折りたためて収納しやすく、下に板を敷くと平面が安定します):楽天市場で見る
ゆきこ( ゚Д゚)『台の穴、飾りじゃなかったんだ…』
ダンボールが反る理由と、それでも使うときは
「アイロン台 代用 ダンボール」で調べる方がわりといるのは、たしかに平らで、大きさも自由で、家にあるからだと思います。実際、平面としての性能は悪くありません。問題は残りの2つです。
ダンボールは、平らな紙2枚の間に波形の紙を挟んだ構造をしています。この波の部分が空気の層になっていて、それが強度を生んでいます。ところがこの構造は、熱と水分にとても弱いのです。
スチームの水分が波の層に入り込むと、紙の繊維が水を吸って膨らみます。そこへアイロンの熱が加わって片面だけが乾くので、表と裏で伸び縮みの差ができ、板全体が反ります。かけている最中に足元がぐにゃりと歪む感覚は、これが起きています。さらに、ダンボールを組み立てている接着剤が熱でにおいを出すことがあり、洗いたての衣類にそのにおいが移ってしまうこともあります。
それでも使うのであれば、次の条件をつけたいところです。
- スチームは使わない——ドライで、霧吹きも使わない。水分を入れないなら反りはかなり減ります
- ダンボールの上に必ずタオルを重ねる——アイロン面を紙に直接当てないことです
- 食品や洗剤が入っていた箱を避ける——におい移りの原因になります
- その日限りの使い捨てと割り切る——一度反ったものは平面に戻りません
常用したい場合は、ダンボールではなく木の板に置き換えるほうが、結果的に手間もお金もかからないと思います。
これだけはやめてほしい代用があります
ここは固い言い方になりますが、実害が出るところなので、はっきり書かせてください。
安全のための確認:テーブルや床の上に布を敷かずに、直接アイロンをかけないでください。木製のテーブルは、表面に薄い化粧板や突板が貼られ、その下に接着剤が使われています。アイロンの熱で接着剤が軟化すると、表面が浮く、白く曇る、変色するといった跡が残ります。この跡は元に戻りません。フローリングやクッションフロアも同じで、樹脂系の床材は熱で縮んだり、艶が変わったり、焦げたりします。ガラス天板は急な温度差で割れるおそれがあります。
安全のための確認:ビニール、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維、ビニール製のテーブルクロス、レジャーシートの上でアイロンをかけないでください。これらの素材は熱で溶けます。溶けたものはアイロンの底面と衣類の両方に貼り付き、冷えて固まると簡単には取れません。衣類のほうは繊維に食い込んでしまうため、多くの場合そこで諦めることになります。
安全のための確認:カッティングマットやプラスチック製のまな板を、アイロン台の代わりにしないでください。カッティングマットは塩化ビニルなどの樹脂でできており、耐熱を想定した製品ではありません。表面が波打つ、溶ける、においを出すといったことが起こり得ます。硬くて平らだからという理由で選ばれやすいのですが、いちばん向いていない素材のひとつです。
安全のための確認:カーペット、ラグ、布団、ソファの上でアイロンをかけないでください。熱がこもり、内部で蓄熱します。表面が熱くないので気づきにくいのですが、変色や焦げの原因になります。
アイロンの底面に何かが焦げついてしまった場合の落とし方は、アイロンについた焦げの取り方のほうにまとめています。溶けた樹脂と、茶色い焦げと、白い水あかでは対処がまったく違うので、あわせて見てもらえたらと思います。
スチームを使う日は、下の作りが効いてきます
ドライでかける日と、スチームを使う日とでは、必要な条件の重みが変わります。スチームを使うなら、3つめの蒸気を逃がすがぐっと大事になります。
スチームアイロンから出る蒸気は、布を通り抜けて下へ向かいます。下が板やテーブルのように水を通さないものだと、そこで行き場を失って、布の裏側に水滴として戻ります。かけたはずのところが湿っている、乾いたらまたシワになった、というのはこれです。
ですから、スチームを使う日は下に吸ってくれるものを入れるのが要点になります。
- タオルの枚数を増やす——2枚を3枚にするだけで吸える水分量が変わります
- いちばん下に古いタオルを1枚追加する——受け皿の役目です
- かけ終わったら、その場で片づけずに広げて乾かす——濡れたまま畳むとにおいが出ます
安全のための確認:スチームを使うなら、下に湿気が抜ける構成を作ってください。ダンボールや紙のように水を吸って変形するもの、ビニールのように水も熱も通さないものの上でスチームを使うと、変形や貼り付きが起こります。
そもそもアイロン台を出すのが面倒でスチームだけで済ませたい、という日もあると思います。かける道具そのものを見直す話は、スチームアイロンを買って後悔しないためにと衣類スチーマーで後悔しないためにのほうで、それぞれ得意なことと苦手なことを整理しています。
また、ゼッケンや名前つけの布を貼るためにアイロンを出したという場合は、下地の作り方でにじみ方が変わります。そちらは名前つけの布がにじまないようにする方法にまとめてあります。
常用するなら、結局どれがいちばん安いのか
ここは正直なところを書いておきます。週に1回以上アイロンを使うなら、代用でしのぐより専用のものを持ったほうが早いです。
理由は3つあります。ひとつは、代用は毎回セッティングが要ること。タオルを出して、折って、板を敷いて、終わったら乾かして畳む。この5分が毎回かかります。ふたつめは、仕上がりの差が積み重なること。平面が甘い状態でかけると往復が増えるので、その分だけ時間もかかり、布も傷みます。みっつめは、価格差がそれほど大きくないこと。卓上サイズの小さなアイロン台であれば、収納も食器棚の隙間に立てて入る程度です。
選ぶときに見るところは、大きさと脚の有無です。テーブルの上に置いて座ったまま使う卓上型は、収納が小さく済み、ちょっとした襟や袖に向いています。シーツやワイシャツを本気でかけるなら、脚のあるスタンド型のほうが体が楽です。どちらを選ぶにしても、表面に穴が開いているか、メッシュ構造になっているかは見ておくとよいと思います。3つめの条件が最初から満たされている製品ということになります。
- 卓上アイロン台(テーブルに載せて使う小型のもの。収納しやすく、襟や袖の細かい部分に向いています):Amazonで見る
ちなみに、収納場所に困って突っ張り棒で吊るす、という方法を考えている場合は、落ちない付け方のコツを先に押さえておくと安心です。100円ショップで買える落下防止グッズについては突っ張り棒が落ちないようにする100均グッズにまとめています。
代用品の早見表
手元にあるものから逆に引けるように、3つの条件でまとめておきます。
| 代用するもの | 平ら | 熱に耐える | 蒸気を逃がす | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| 厚手のバスタオル2枚から3枚 | △ | ○ | ○ | 今日1回。板の上に敷けば十分 |
| 木の板+バスタオル | ○ | ○ | ○ | 常用できる組み合わせ。いちばん安定 |
| 耐熱のアイロンマット | △ | ○ | △ | 下に板を敷けば実用的。収納も楽 |
| ダンボール+タオル | ○ | △ | × | ドライのみ。その日限りの使い捨て |
| 座布団+タオル | × | ○ | ○ | 沈むので圧がかからない。おすすめしません |
| テーブル・床に直置き | ○ | × | × | 使いません。天板と床が傷みます |
| ビニール・レジャーシート | ○ | × | × | 使いません。溶けて貼り付きます |
| カッティングマット | ○ | × | × | 使いません。耐熱を想定した製品ではありません |
| カーペット・布団の上 | × | × | × | 使いません。熱がこもって焦げます |
アイロンから離れる時のこと
代用の話とは少し離れますが、台がない状態でのアイロンがけは、どうしても床や低い場所での作業になりがちです。そこで最後にひとつだけ。
安全のための確認:アイロンを置いたままその場を離れないでください。離れる時は、短時間でも必ず電源プラグをコンセントから抜いてください。電話が鳴った、子どもに呼ばれた、宅配が来た——アイロンの事故はこの数分で起きます。スタンドに立てていても、コードに足を引っかければ倒れますし、倒れた先が布であれば焦げます。床でかけている時は、通り道にコードが横切っていないかも見ておいてもらえたらと思います。
使い終わったあとも、本体は思っているより長く熱を持っています。子どもの手が届く高さに置かず、完全に冷めてから片づけるようにしてください。
まとめ:3つの条件で見ると迷いません
- アイロン台の仕事は、平ら・熱に耐える・蒸気を逃がすの3つ。代用品を探すというのは、この3つをどう分担させるかを考えることです
- 今日1回だけなら、厚手のバスタオルを4つ折りで2枚から3枚。熱と蒸気の条件は満たせます
- 常用するなら、木の板とバスタオルの組み合わせが安定します。板が平面、タオルが耐熱と蒸気を受け持ちます
- 100円ショップの品揃えは店舗や時期で違います。アイロンマット、耐熱表示のあるシート、木の板あたりを探してみてください
- ダンボールは熱と水分で反ります。使うならドライのみ、必ずタオルを重ねて、その日限りに
- テーブルや床に直接置いてかけないでください。天板の変色や床の焦げは元に戻りません
- ビニール、化学繊維、カッティングマットの上でかけないでください。溶けて衣類とアイロン面に貼り付きます
- カーペットや布団の上でかけないでください。熱がこもって焦げます
- スチームを使うなら、下に湿気が抜ける構成を。タオルの枚数を増やすのがいちばん簡単です
- その場を離れる時は、短時間でも電源プラグを抜いてください。
保存版:この記事の早見表
3つの条件と、代用品ごとの向き不向きを1枚にまとめました。スマホに保存しておくと、売り場で現物を前にした時にそのまま判断できます。



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