※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれています。
ご飯を炊いて、火から下ろして、蒸らして。さあ食べようと蓋に手をかけたら、びくともしない。指先が痛くなるほど引っぱっても、カタッとも動かない。メスティンを使っていると、けっこうな確率でこの場面に出くわします。
この時にまずお伝えしたいのは、たいていの場合それは力の問題ではないということです。もっと強く引けば開くというより、引くこと自体があまり効かない状態になっています。理由が分かると、力を入れるより先にやることが見えてきます。
そしてもうひとつ。「買ってきたばかりで、まだ一度も火にかけていないのに固い」という場合は、上のものとまったく別の話になります。原因が違えば手当ても違うので、この記事では最初にそこを切り分けるところから始めますね。
まず「いつから開かなくなったか」で二つに分かれます
同じ「開かない」でも、中で起きていることは正反対と言っていいくらい違います。分かれ道はひとつだけ、火にかけたあとに開かなくなったのか、火にかける前から固かったのかです。
火にかけたあとに開かなくなったのなら、原因はほぼ気圧です。中の空気が冷えて縮み、外の空気に蓋が押さえつけられています。この場合、引っぱる力を増やしても状況は変わりません。押さえている力そのものを消してあげるほうが、はるかに早く開きます。
いっぽう、買ってきて洗っただけの新品が固い、あるいは冷たいまま一度も加熱していないのに固い、という場合は気圧の話ではありません。蓋と本体の縁が物理的にきつく当たっているだけで、こちらは形の問題になります。
見分けの目安をもうひとつ。負圧で張り付いている蓋は、押しても引いても「ぴったり吸い付いた感じ」で、指を引っかけると本体ごと持ち上がってきます。形の問題で固い蓋は、少しずつなら動く代わりに、特定の角や辺で「ガチッと引っかかる」感触が返ってきます。この手ざわりの違いは、けっこう分かりやすいです。
加熱後に開かないのは、中の空気が縮んだからです
ここが今回の核になるところです。少しだけ理屈の話をさせてください。
メスティンでご飯を炊いている間、中は湯気でいっぱいになります。水が蒸気に変わると体積がぐんと増えるので、余った分は蓋のわずかな隙間から外へ押し出されていきます。この時点では、中は外より圧が高い状態です。
問題はそのあと。火から下ろすと、中の温度が下がっていきます。すると蒸気が水に戻り、残った空気も冷えて縮むので、中の圧力がすーっと下がっていきます。ところが蓋がぴったり閉まっていると、減った分を埋める空気が外から入ってこられません。
結果として、外の大気圧のほうが強くなり、蓋が上からぎゅっと押さえつけられることになります。これが「開かない」の正体です。押さえている力は大気の重さそのものなので、指の力で勝とうとするとかなり苦しい勝負になります。
この現象は、キャンプ道具に限った話ではありません。湯たんぽの栓が開かなくなるのも、熱いお湯を入れて閉めたあとに中が冷えるからで、まったく同じ理屈です。圧力鍋の蓋が開かない時も、内側の圧力と外の大気圧の関係で説明がつきます。タッパーがレンジのあとに開かなくなるのも同じ仲間で、要するに密閉された容器を温めてから冷ますと、たいてい蓋は張り付くということなんです。
ゆきこ( ゚Д゚)『家じゅうで同じことが起きてたのね…』
ちなみに、蒸気が水に戻ることの効き目はかなり大きいです。水は蒸気になると体積がおよそ千七百倍に膨らむと言われますから、逆に戻る時には同じだけしぼむことになります。ほんの数ミリリットルの水滴が中で戻っただけでも、蓋の面積ぜんぶに押しつける力としてはじゅうぶんな量です。ご飯を炊いたあとが特に開きにくいのは、水をたっぷり使った直後だからでもあります。
張り付いた蓋を安全に外す——温めなおすのがいちばん近道です
安全メモ:加熱直後のメスティンは、本体も蓋も非常に高温になっています。素手で触るとやけどをします。必ず乾いた厚手の布か、耐熱のグローブを使ってください。濡れた布巾は、含んだ水分が熱で蒸気に変わって布を貫通するため、乾いた布よりかえって重いやけどにつながります。使わないでください。
そのうえで、いちばん確実で道具を傷めない方法は、もう一度火にかけることです。
1. 弱火で温めなおす
中の空気が縮んだせいで張り付いているのですから、もう一度ふくらませてあげれば元に戻ります。弱火にかけて数十秒から一分ほど温めると、中の空気が膨張して、蓋がふっとゆるむ瞬間が来ます。「ぽこっ」と小さな音がすることもあります。
この時、中身が空の状態で火にかけないでください。ご飯や水分が入ったまま張り付いた蓋を外すために温めるのは問題ありませんが、中が空っぽのアルミ容器を火にかけると、あっという間に温度が上がって変形や変色の原因になります。中身が入っているかどうか思い出せない時は、この方法は使わないでください。
また、温めすぎもよくありません。目的は張り付きをゆるめることであって、中身を再加熱することではないので、弱火で短く、様子を見ながらにしてください。ゆるんだらすぐ火から下ろします。
2. ぬるま湯につける、またはお湯をかける
火を使いたくない場面や、すでに片付けが進んでいる時にはこちらです。本体の側面をぬるま湯にひたす、あるいはお湯をゆっくりかけると、内側の空気が温まって同じことが起こります。
火にかけるより穏やかなぶん、少し時間がかかります。すぐに動かなければ、湯を替えて何度か繰り返してみてください。アルミは熱が伝わるのが速いので、待たされてもせいぜい一、二分という感覚です。
逆に、冷たい水につけるのは避けてください。中がさらに冷えて圧が下がるので、張り付きは強くなる一方です。金属も急な温度変化で歪むことがあります。
3. フチの隙間から空気を入れる
温めるのが難しい時の三つ目です。押さえつけているのは「中と外の圧の差」なので、どこか一か所でも外の空気が中へ入れば、差そのものが消えて蓋は軽くなります。
やり方としては、蓋と本体の合わせ目に指の腹を当てて、蓋の縁を上ではなく横へずらすように少し力をかけます。真上に引くと全周が同時に持ち上がることになって不利ですが、横にずらすと一点だけ隙間ができやすく、そこから空気が入ります。空気が入った瞬間、抵抗が嘘のように消えます。
四隅のどれか一角だけを、爪ではなく指の腹でそっと押し下げる、というやり方もあります。金属のヘラや工具を差し込むのは、次の章のとおりおすすめできません。
新品のときから固いのは、気圧とは別の話です
ここからは、火にかける前から固い場合の話になります。加熱していないのですから中の空気は縮みようがなく、原因は蓋と本体の当たり方にあります。
よくあるのが、製造時に残ったバリです。アルミの板を型で抜いたり削ったりする工程で、縁にごく細かい出っ張りやささくれが残ることがあります。目に見えないくらいの高さでも、蓋がはまる部分に残っていれば当然きつくなりますし、指を滑らせると引っかかる感触があります。
もうひとつはわずかな歪み。アルミはやわらかい金属なので、輸送中に少し押されただけでも縁が内側や外側にほんの少しよれることがあります。四辺のうち一辺だけが妙に固い、という時はこれを疑ってみてください。
まずは少しずつ動かして馴染ませる
いきなり削るより先に試したいのが、蓋を左右にゆっくり動かして、当たっている場所を馴染ませることです。何度か開け閉めしているうちに、当たりが取れてすっと入るようになる個体もあります。この時も、一気に引き抜こうとせず、少しずつ角度を変えながら動かすほうが変形のリスクが低いです。
バリが分かる場合は、やすりでならすという手も
指で触ってはっきり出っ張りが分かるなら、細かい目の紙やすりや金属やすりで軽くならす方法があります。ポイントは削るというより角を落とす程度にとどめることで、そこだけ深く削ると今度は隙間ができてしまいます。
ただし、バリ取りやシーズニングが必要かどうかは製品によって違います。はじめから縁を仕上げてあって何もしなくていいものもあれば、購入者が自分で整えることを前提にしているものもあります。まずはお使いの製品の説明書や販売ページの案内を確かめてから手を入れてください。削ってしまうと元には戻せません。
作業には粉が出ますし、削ったあとは中性洗剤で洗って粉を残さないようにしてください。アルミの削り粉が食品に混ざらないよう、洗いはていねいに。ここは省略しないほうがいい工程です。
なお、縁が目に見えて曲がっている、蓋が明らかに斜めにしか乗らない、といった状態は、家庭で直そうとするとかえって悪化しやすいところです。買い替えを考える段階なら、下のあたりから探せます。
やらないほうがいいこと——こじ開けと、落として外す
開かない時に思いつきやすい方法のうち、道具を確実に傷めるものがいくつかあります。ここは固く書いておきます。
ドライバーやナイフ、金属のヘラなどを差し込んでこじ開けないでください。メスティンのアルミは非常に薄く、てこの原理で一点に力がかかると簡単に曲がります。しかも曲がるのはいちばん大事な縁の部分です。ここが一度でも歪むと蓋がまっすぐ乗らなくなり、以後は炊飯中に蒸気が抜けやすくなったり、逆にどこか一辺だけがきつくなったりして、元の密閉には戻りません。開けたその日は解決しても、次から毎回困ることになります。
地面や机に打ちつける、落として衝撃で外す、といった方法も避けてください。角がへこむと、そこだけ当たり方が変わって同じことが起きます。中身が熱い状態でやれば、外れた拍子に中身が飛び出してやけどをする危険もあります。
ペンチなどで蓋をつかんで引き抜くのもおすすめしません。つかんだ跡がへこみとして残りますし、力が一点に集まるぶん変形しやすくなります。
まとめると、力で勝とうとする方法はすべて分が悪いということです。押さえているのは大気の圧力なので、力比べではなく、圧力差をなくす方向で考えるほうが早くて安全です。
ちなみに「蓋が固着して取れない」という悩みは金属の道具に限りません。ねじ式の蓋が固まって回らなくなる料理酒の蓋が取れない時の対処は、乾いた糖分が接着剤のように働くという別の機構ですが、「こじ開けずに原因のほうを消す」という考え方は共通しています。
次から張り付かせないための、置き方のちょっとしたこと
いちばん楽なのは、そもそも張り付かせないことです。難しいことは何もなくて、冷える前に空気の通り道を作っておくだけで済みます。
- 火から下ろして蒸らしが終わったら、蓋を少しずらしておく——数ミリでもかまいません。空気が出入りできれば圧の差は生まれません
- 蒸らし中も、完全密閉にこだわりすぎない——蒸らしの間はまだ温度が高いので張り付きは起きにくいですが、そのまま忘れて放置すると冷めきって固まります
- しまう時は完全に冷ましてから蓋を閉める——温かいうちに閉じてケースに入れると、冷える過程でしっかり張り付きます
- しまう時は水気を残さない——アルミも水分が残ると黒ずみや白い斑点の原因になります。乾いてから重ねてください
- 持ち運びの時は蓋を裏返して乗せるだけにする——きっちりはめずに、ケースやゴムバンドで押さえておくと張り付きません
「熱いうちに蓋をずらす」を習慣にできると、この悩みはほぼ出なくなります。逆に言えば、開かなくなった日は閉めたまま冷ました日だったはずです。
症状から原因を引く早見表
いま手元がどんな状態かによって、先に試すことが変わります。上から順に、よくある順番で並べました。
| 症状 | 原因 | 先に試すこと |
|---|---|---|
| 炊いたあと、冷めてから開かなくなった | 中が負圧になり大気圧で押されている | 弱火で数十秒温めなおす。乾いた布で持つこと |
| 火が使えない場所で開かない | 同じく負圧 | ぬるま湯につける、またはお湯をかける |
| 吸い付くように張り付き、引くと本体ごと持ち上がる | 典型的な負圧の張り付き | 蓋を横へずらして隙間から空気を入れる |
| 新品で、一度も加熱していないのに固い | 縁のバリ、または輸送時のわずかな歪み | 少しずつずらして開け閉めし、当たりを馴染ませる |
| 四辺のうち一辺だけが極端に固い | その一辺の歪みか出っ張り | 指で縁をなぞって出っ張りを探す。製品の案内を確認 |
| 指に引っかかるザラつきがある | 製造時のバリ | 細かいやすりで角を落とす程度に。削りすぎない |
| 蓋が斜めにしか乗らない・目に見えて曲がっている | 変形 | 密閉が戻らないため、家庭での修正は避ける |
| 冷水につけたら余計に固くなった | 中がさらに冷えて圧が下がった | 冷やすのをやめ、温める方向に切り替える |
上の三行が当てはまるなら、温めるだけでほぼ解決します。四行目から下は、気圧ではなく形の問題になります。
まとめ:引く前に、温める
- 加熱後に開かなくなったのは負圧が原因。中の空気が冷えて縮み、蓋が大気圧で押さえつけられています
- いちばん安全なのは弱火で数十秒温めなおすこと。空気がふくらんで、ふっとゆるみます
- 火が使えないならぬるま湯。冷水は逆効果です。中がさらに冷えて張り付きが強まります
- 蓋は真上に引かず、横へずらす。一点でも隙間ができれば空気が入り、圧の差が消えます
- 新品から固い場合は気圧ではなくバリや歪み。まずは少しずつ動かして馴染ませ、削るかどうかは製品の案内を確かめてから決めてください
- 加熱直後は本体も蓋も高温です。必ず乾いた厚手の布か耐熱グローブを使ってください。濡れた布は蒸気やけどの原因になるため使わないでください。中身が空の状態で火にかけないでください
- ドライバーなどでこじ開けない、落として衝撃を与えない。薄いアルミは一度歪むと密閉が戻りません
- 次からは、火から下ろしたら蓋を少しずらしておく。完全に冷ましてからしまえば、そもそも張り付きません
保存版:この記事の早見表
原因の切り分けから外し方までを1枚にまとめました。電波の届かない場所でも見られるよう、スマホに保存しておくと安心です。



コメント