コートについた猫の毛が取れないのはなぜ——コロコロの前に、静電気を抜いておく

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出かける前にコートを羽織って、玄関で粘着ローラーをひととおりかける。シートを何枚もめくって、もういいだろうと鏡を見ると、白い毛がまだ何本も立っている。しかも取れそうな顔をして、そこにしっかり残っている——猫と暮らしていると、冬のあいだ何度も繰り返す場面だと思います。

これは道具の性能が足りないというより、粘着ローラーが解けない種類の付き方をしているからです。コートに乗っているだけの毛と、繊維のあいだに刺さり込んでいる毛は、まったく別の状態にあります。前者はローラーでほぼ全部取れますが、後者は表面をなでても抜けません。

そして刺さっているほうの毛には、順番の決まった外し方があります。先に静電気を抜いて、毛を立たせてから、引っかけるという流れです。そこでこの記事では、なぜ取れないのかというしくみから始めて、道具ごとの得意分野、素材別の分岐、洗濯機に入れる前にやっておきたいこと、そして次に着るときのための予防まで、順番に整理しました。

コロコロで取れないのはなぜ ① 静電気が毛を引き寄せる 乾いた冬ほど強く貼りつきます ② 細い毛が繊維の奥へ刺さる 猫の毛は細く先が尖っています ③ 起毛素材は毛足がつかむ 表面をなでるだけでは出ません 先に静電気を抜くと外れます 霧吹きで軽く湿らせてから毛を起こす ※スプレーは目立たない場所で先に試す

コロコロで取れないのは、毛が「乗って」いないからです

粘着ローラーが得意なのは、布の表面に置かれているものを持ち上げることです。ホコリ、糸くず、髪の毛。これらはたいてい繊維の上に乗っているだけなので、粘着面が触れれば付いてきます。

ところが猫の毛は、そこにとどまってくれません。理由が3つ重なっています。

①静電気が、毛を布に押しつけている

冬の乾いた空気のなかでは、服がこすれ合うたびに静電気が生まれます。プラスとマイナスに分かれた電気は互いに引き合うので、軽い毛は磁石に吸い寄せられるように布へ貼りつきます。しかも貼りついたあとも、その力はかかり続けています。

粘着ローラーで持ち上げようとしても、下から引きとめる力が働いているぶんだけ外れにくくなります。さらに困ったことに、ローラーを転がす動作そのものが摩擦なので、かければかけるほど新しい静電気が発生して、周りの毛を呼び寄せるということも起こります。取っているのに増えているように感じるのは、気のせいばかりではありません。

②猫の毛は細くて先が尖っていて、繊維の隙間に入り込む

猫の毛は、犬の毛と比べても細いものが多く、とくに下毛と呼ばれるやわらかい毛はとても軽くて細いです。先端が細く尖っているので、布の織り目や編み目のわずかな隙間に、針のように入り込みます

入り込んだ毛は、表面から見ると先端だけが出ている状態です。指でつまもうとしても滑りますし、粘着面が触れるのも先の数ミリだけなので、引き抜くだけの力がかかりません。犬を飼っているご家庭のほうが毛の始末が楽だと言われることがあるのは、毛の太さと硬さの違いが効いています。

③起毛素材は、毛足そのものが毛をつかまえる

コートに多いウール、カシミヤ、ボア、フリース、メルトンといった素材は、表面に細かい毛足が立っています。これは空気を抱えて暖かくするための構造なのですが、猫の毛にとってはそのまま絡む場所になります

毛足のあいだに落ちた毛は、上からなでても毛足に隠れて出てきません。逆に毛足の向きに逆らってこすると、いったん浮き上がってきます。このあと出てくるゴム手袋やスポンジが効くのは、まさにこの「起こす」動作ができるからです。

先にやると効くこと——静電気を抜いてから始める

取り方の話に入る前に、順番だけ先にお伝えしておきたいところです。静電気が残ったまま道具を当てても、外れた毛がすぐ隣に貼りつき直します。だから最初にやるのは、電気のほうを逃がすことになります。

方法①——霧吹きで、ごく軽く湿らせる

いちばん手軽なのが水です。静電気は空気が乾いているほど溜まりやすく、水分があると逃げていきます。霧吹きを30センチほど離して、表面がしっとりする程度に一往復——濡らすのではなく、湿らせるくらいで十分です。

それだけで貼りつく力がゆるみ、毛が起き上がってきます。この状態でブラシやゴム手袋を当てると、さっきまで動かなかった毛が素直に集まってくれます。べたべたに濡らすとかえって毛が肌に貼りつくように張り付くので、量は控えめにしてもらえたらと思います。

方法②——柔軟剤を薄めたスプレー

もう少し持続させたい場合は、柔軟剤を水で薄めたものを使う方法があります。柔軟剤には繊維の表面をなめらかにして、電気を溜めにくくする成分が入っているので、水だけより効きが長続きします。目安は水200mlに柔軟剤を数滴という、かなり薄い濃度です。

安全メモ:必ず、裾の内側など目立たない場所で先に試してください。色が濃い生地では白っぽい跡が残ることがありますし、シルクやレーヨンの混ざった素材、水シミの出やすいものでは輪ジミになることがあります。濃く作ると、乾いたあとに表面がべたついて、かえってホコリを集めるようになります。それから、革やスエードの部分にはかけないでください。

方法③——市販の静電気防止スプレー

衣類用として売られているものは濃度が調整されていて、乾いたあとの残りも少ないように作られています。手間を減らしたい場合はこちらが確実です。玄関にひとつ置いておいて、出かける前にさっとかけるという使い方だと続けやすいと思います。

静電気そのものの起こり方や、ドアノブでバチッとくる仕組みについては、静電気を防ぐ方法のほうで詳しく書いています。素材の組み合わせで発生量が変わる話は、毛の付き方にもそのまま効いてきます。

道具別の効きどころ早見表

静電気を抜いたら、あとは物理的に外す段階です。よく使われる道具は、それぞれ得意な状態が違います。

道具 効くのはどんな毛か 気をつけたいところ
粘着ローラー(コロコロ) 表面に乗っているだけの毛。仕上げに残りを拾う 刺さった毛には届かない。転がす摩擦で静電気が増えることがある
ゴム手袋(食器洗い用) 起毛素材に絡んだ毛。手でなでると毛が集まって玉になる 力を入れすぎると生地が伸びる。手袋が乾いていると滑りにくい
台所用スポンジ(硬い面) ウールやメルトンの表面に浅く刺さった毛 研磨面は生地を傷める。使うのは硬いほうの面でも軽く
エチケットブラシ 毛足の奥に入り込んだ毛。一方向に起こして掻き出す 方向を間違えると押し込む。カシミヤなど繊細な素材は毛羽立ちに注意
ペット用の毛取りブラシ・ラバーブラシ 広い面積に大量に付いた毛。まとめて集めるのが速い 目が粗いと生地を引っかける。装飾やボタンの周りは避ける
洗濯機の乾燥フィルター 洗える素材で、全体に散らばった毛 他の衣類に毛が移る。フィルターと排水口が詰まる
掃除機(ブラシノズル・弱) ボアやフリースの奥に沈んだ毛 吸引が強いと生地を引き込む。必ず弱で、布からは少し離す

この表でいちばん伝えたいのは、粘着ローラーは「最後」の道具であるということです。先に静電気を抜いて、ブラシやゴム手袋で奥の毛を起こして、浮いてきたものをローラーで拾う。この順番にすると、シートの消費もぐっと減ります。

ゴム手袋が効くのは、摩擦とゴムの表面のおかげです

ゴム手袋をはめて、コートの表面を上から下へなでる。それだけで毛が集まって、細いロープのような玉になっていきます。ゴムの表面には細かい凹凸があって、毛の一本一本を引っかけながら送っていけるからです。

コツは、行ったり来たりせず一方向に動かすことと、手袋を軽く湿らせておくことです。乾いたゴムは滑りやすく、少し湿っているほうが毛をつかみます。集まった毛の玉は、そのままつまんで取れます。

広い面を一気に片づけたいときは、専用のブラシが速いです

コート一着ぶんを毎日やるとなると、ゴム手袋でも時間がかかります。ペット用の毛取りブラシは、ラバーの突起や短い毛足で毛を掻き集める作りになっていて、ひと拭きで集められる面積が違います。粘着シートのように消耗品を足していく必要がないのも、使う回数が多いご家庭では効いてきます。

ゆきこ( ゚Д゚)『順番があったなんて、知らずに何枚めくったんだろう…』

素材別の分岐——同じやり方では通用しません

コートといっても表面の作りはさまざまで、効く道具と避けたい道具が分かれます。

ウール・カシミヤ(メルトン、ステンカラー、チェスターなど)

表面に短い毛足があり、そこへ毛が浅く刺さります。エチケットブラシを毛並みの方向に沿って、一方向に——これが基本です。往復させると、いったん出た毛をまた押し戻すことになります。

カシミヤや高番手のウールはとても繊細なので、スポンジの研磨面や、目の粗いブラシは避けてください。表面の繊維が起き上がって毛羽立ち、そこから毛玉になっていきます。すでに毛玉が出てしまった場合の直し方は、セーターの毛玉の取り方のほうにまとめてあります。

ボア・フリース・ムートン調

いちばん手強いのがここです。毛足が長く、その奥に猫の毛が沈み込むので、表面をなでるだけでは何も出てきません。ゴム手袋で毛足を起こしながら掻き出すか、掃除機のブラシノズルを弱にして、布から少し浮かせて吸うという手になります。

掃除機を使う場合、安全メモ:吸引を強にすると生地がノズルに引き込まれて、毛足が抜けたり縫い目に負担がかかったりします。必ず弱に設定して、布を軽く張った状態で当ててもらえたらと思います。

ダウンのナイロン面・ツルツルした化繊

織り目が詰まっていて起毛もないので、毛は刺さらず静電気だけで貼りついています。つまり、静電気さえ抜ければほぼ落ちます。霧吹きか静電気防止スプレーを軽くかけて、乾いた布でひとなでするだけで、粘着ローラーもほとんど要りません。

ナイロンやポリエステルは静電気が起きやすい素材の代表なので、貼りつく量そのものは多くなりがちです。そのぶん、予防が効きやすい素材でもあります。ダウンの扱いについては、ダウンジャケットにマフラーはいらないのかのほうでも保管の話に触れています。

洗濯機に入れる前に、やっておきたいこと

毛が付いたまま洗ってしまえば流れるのでは、と思うところですが、ここは少し慎重にしたいところです。

まず毛は水の中で他の衣類へ移ります。一緒に入れた黒いニットや白いシャツに、まんべんなく行き渡って出てくることがあります。しかも濡れた状態で繊維に押し込まれるので、乾いたあとのほうが取りにくくなります。

もうひとつが設備のほうで、安全メモ:大量の毛は排水フィルターや排水経路に溜まって、詰まりや排水エラーの原因になります。糸くずフィルターは毎回外して洗い、乾燥機能を使うご家庭では乾燥フィルターも都度お手入れしてください。目詰まりしたまま乾燥運転を続けると、機械に負担がかかります。

ですので順番としては、洗う前に乾いた状態でできるだけ毛を落としてから、洗濯ネットに入れて単独で洗うという形になります。乾いているうちのほうが毛は外れやすいので、この一手間がいちばん効きます。

洗濯表示で水洗いができない表示になっているコートは、無理に家で洗わずクリーニング店に相談してください。その際、毛が付いていることを最初に伝えておくと、専用の処理をしてもらえることがあります。

次に着るときのための予防

取る作業をどれだけ上手くしても、次の日にはまた付きます。付く量そのものを減らすほうへ手を回すと、毎朝の玄関がだいぶ静かになります。

  • 出かける前に静電気防止スプレーをひと吹き——貼りつく力そのものを下げておくと、付いた毛も払うだけで落ちます
  • しまうときは不織布のカバーをかける——クローゼットの中を舞う毛が直接コートに触れなくなります。通気は保ちたいので、ビニールの密閉袋は避けます
  • 猫が過ごす部屋にコートを置かない——椅子の背やベッドの上は、いちばん毛が集まる場所です。かける場所を一段変えるだけで量が変わります
  • 玄関でひと払いしてから出る——家の中で落とせば、外で気づいて困ることが減ります
  • 加湿して部屋の乾燥をやわらげる——空気に水分があると静電気が溜まりにくく、舞う毛も落ちやすくなります
  • 猫のブラッシングで、抜ける毛の量そのものを減らす——抜け替わりの時期は落ちる毛が増えるので、そのぶん服に付く量も変わってきます

ブラッシングについては、頻度もやり方も猫によって向き不向きがありますし、嫌がる子に無理をさせるものでもないと思います。やり方に迷う場合や、抜け方が急に変わったように感じる場合は、かかりつけの動物病院で相談してもらえたらと思います。皮膚の状態が関係していることもあるので、そこは自己判断より確かです。

それから、ご家族に猫アレルギーの方がいる場合は、衣類に付いた毛やフケが症状に関わることがあります。くしゃみや目のかゆみが続くようなら、市販薬で様子を見るより先に医療機関で相談してください。衣類側でできるのは、外出用のコートを猫のいる部屋に置かない、カバーをかけてしまう、といった範囲までになります。

クローゼットの中の空気の通し方や、冬物をまとめてしまうときの考え方は、ブーツの保管方法のほうにも共通する部分をまとめています。

まとめ:静電気を抜いて、起こして、最後に拾う

  1. 取れないのは、毛が乗っているのではなく刺さっているから。静電気で押しつけられ、細い毛が繊維の隙間に入り、起毛の毛足がつかまえています
  2. 最初にやるのは静電気を抜くこと。霧吹きで軽く湿らせるか、静電気防止スプレーを。柔軟剤を薄めて使う場合は、目立たない場所で先に試してください
  3. 粘着ローラーは最後の仕上げ用。ゴム手袋やブラシで奥の毛を起こしてから拾うと、残り方がまるで違います
  4. 素材で手が変わります。ウールはブラシを一方向に、ボアはゴム手袋か掃除機の弱、ダウンのナイロン面は静電気を抜くだけでほぼ落ちます
  5. 洗濯機に入れる前に、乾いた状態で毛を落とす。他の衣類に移りますし、フィルターや排水の詰まりにつながります
  6. 予防は、スプレー・カバー・置き場所の3つ。付く量そのものが減れば、朝の作業も短くなります

保存版:この記事の早見表

取れない理由と、道具の使う順番、素材別の分岐を1枚にまとめました。玄関に貼っておくか、スマホに入れておくと迷わずに済むと思います。

コートの猫の毛カード:取れない理由は静電気で押しつけられ細い毛が繊維に刺さり起毛の毛足がつかむため、順番は静電気を抜く、ゴム手袋やブラシで起こす、粘着ローラーで拾うの3ステップ、ウールはエチケットブラシを一方向に、ボアやフリースはゴム手袋か掃除機の弱、ダウンのナイロン面は静電気を抜くだけで落ちる、洗濯機に入れる前に乾いた状態で毛を落として単独で洗う、柔軟剤スプレーは目立たない場所で先に試す

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